腰痛に関する単純なメッセージを作成するのは、複雑な課題である

Devising Simple Messages About Back Pain Is a Complex Task


オーストラリアのビクトリア州の公衆衛生キャンペーン、およびWorking Backs Scotland公衆衛生キャンペーンは、どちらも、腰痛に関する単純かつ率直なメッセージに大きく依存していた。両方のキャンペーンでは、核となるメッセージにThe Back Book という教育パンフレットを大いに利用した。

このパンフレットは、単刀直入な妥協のない言葉で腰痛の現代的な考え方を述べており、腰は丈夫にできていること、活動や仕事は有益であること、そしてほとんどの人は治療してもしなくても完全に回復できることを強調している。

The Back Book で使われている言葉は、このパンフレットがあたかもパブで数時間で書き上げられたかのような印象を与える。しかし実は、6名の著者が1年間かけてこのパンフレットの複数の原案を検討した。彼らはそれを予備的検討とピアレビューにかけた。そしてそれについて厳密な科学的検討を行った。

言い換えると、腰痛に関する単純なわかりやすいメッセージを考案するのは、複雑な過程になりうる。The Back Book の共著者Kim Burton博士は、すべての設定およびすべての現場で有効な、ただ1つのメッセージなどないだろうと指摘する。メッセージは、それを受け取るさまざまな対象に合わせて、各集団に適した言葉とコンセプトを用いて、特別に作成されなければならない。

メッセージの内容は、意図する伝達様式にも依存する。ラジオ広告用のメッセージはテーマは共通するかもしれないが、車のバンパーに貼るステッカーには恐らくふさわしくないだろう。

Burton博士は、公衆衛生キャンペーンでは患者だけでなく一般大衆も対象に含まれるため、腰痛に関する基本メッセージは医療現場外でも有効で説得力がなければならないと指摘する。「The Back Bookは病院で使用することを意図したものでしたが、ビクトリア州のキャンペーンによって、同じメッセージが病院外でも使用できることが明らかになりました。それらは、患者にもそれ以外の人々にも同じように使用できました」。

同じくBurton博士は、どんな有効なメッセージでも、腰痛に関する統一された概念またはモデルを中心に展開しなければならないと指摘する。.「腰痛に関する従来の損傷モデルから離れることは有益ですが、その代わりとして一般大衆が信頼できる合理的なモデルを提示しなければなりません」と博士は強調する。

Burton博士は、これは今後の研究にとって前途有望な分野だと考えている。腰痛に関する情報伝達は、言葉および伝達様式の両面で多くの方法が考えられる。博士は、科学者らはこの分野の析究に着手したばかりであると指摘する。

The BackLetter No.38.0ctober2004


The Back Bookからの抜粋

腰痛について明らかになっていること
このガイドラインに従うことそうすれば必ず楽になる

  • 腰の痛みやうずきは、通常、重い病気によるものではない。

  • ほとんどの腰痛は速やかに治まり、少なくとも通常の生活ができる程度になる。

  • 放置しない限り、腰痛のために体か不自由になることはない。

  • 腰痛を起こした人の半数は2年以内に再発する。これは深刻な病気だという意味ではない。発作のない時期には、ほとんどの人が通常の生活に戻ることができ、症状はほとんどない。

  • 痛みが非常に強くなることがあり、しばらくの間はやや活動を控えることが必要になる場合もある。しかし、1〜2日以上の安静は通常は有効ではなく、かえって害になることもあるので、身体を動かすようにすること。

  • 人間の腰は動かすようにできている。通常の活動に戻るのが早いほど、腰の状態も早く良くなる。

  • 最善策は、痛みがあっても身体を動かし、自分の生活を続けることである。このガイドラインに従うことそうすれぱ必ず楽になる

  • できるだけ平常どおりの生活をすること。そのほうが、ベッドで安静にしているよりもずっと良い。

  • 毎日身体を動かすこと。それで症状がひどくなることはない。ただし、重いものを持つことだけは避けること。

  • 体調の維持に努めること。ウォーキング、サイクリング、スイミングは腰の運動になり、気分も晴れる。腰の状態が良くなってからも続けること。

  • 運動は徐々に始めて毎日少しづつ増やしていくこと。改善していくのがわかるだろう。

  • 仕事を続けるか、もしくはできるだけ早<仕事に復帰すること。必要ならば、1〜2週問は軽い仕事を担当する。

  • 我慢強くなること。しばらくの間、疼痛や刺すような痛みがあるのは異常ではない。

  • すぐに鎮痛剤に頼らないこと。前向きな気持ちで、自分で痛みをコントロールすること。

  • 家に閉じこもったり、自分の楽しみをあきらめたりしないこと。

  • 心配しないこと。寝たきりになってしまうわけではない。

  • 腰痛に関する恐ろしいうわさに耳を傾けないこと。ほとんどは根拠がない。

  • 気が滅入りそうな日にも、ふさぎこまないこと。

  • 前向きで、活動的でいること。そうすれば早く回復し、その後も問題は少ないだろう。

加茂整形外科医院