全米の数百もの市町村が、Michigan州Flint市と同じジレンマに直面している可能性がある。近年、全米で脊椎手術、特に固定術の実施率が急上昇している。多くの市町村および医療システムが同じ疑問を呈している。脊椎手術の件数の急上昇は有益なのだろうか。
脊椎手術は、通常、主観的な適応症および腰痛患者の要求と目的に基づいた、定時手術である。したがって、絶対的に“正しい”手術実施率や、“誤った”手術実施率はない。しかし、多くの観察者は、固定術の実施率の急上昇は、手術の適応の境界線上にいる患者を引き込んでいる可能一性があると考えている。
ここ数ヵ月、マスメディアおよび米国で最も有力な医学雑誌は、固定術を辛辣に批判した記事を掲載している。
“脊椎固定術は、確かに一部の患者の一部の疾患には有効である。しかし、国内のこの手術の実施率に幅広い差異が認められること、手術の実施率が急上昇していること、再手術の実施率が高いこと、そして合併症の発現率が高いことから、この手術が過剰に使用されているのではないかという懸念が生じている。椎間板変性のような最も一般的な適応症に対する有効性も依然としてはっきりしていない”と、Richard
A.Deyo博士らはNew England Journal of Medicineに掲載されたレビューで述べている(Deyo
et all.,2004を参照)。
New York Timesに掲載された刺激的な記事では、脊椎固定術実施率の急上昇は、科学的な証拠というよりは、商業的な利益および金融上の利益によって誘発されたものであったと推測している(Abelson
and Petersen,2003を参照)。
米国のAgency for Health Care Research and Qualityは、脊椎固定術の年間実施例数が1996年から2001年の間に77%増加したことを実証した。それに付随して、脊椎固定術に脊椎のインストルメンテーションシステムを必ず併用することが増えており、コストを著しく押し上げている。
アウトカム研究において、これらの傾向を支持する証拠を見出すのは困難である。事実、技術革新が着実に進んでいるにもかかわらず、固定術の成功率は向上していないようである。
脊椎治療のすべての分野がともに前進するため、米国における固定術の実施率を巡る論争によって、事態を収拾することのできる科学的研究が刺激されることが望まれる。
参考文献:
Abelson R and Peterson M, An operation to ease back pain bolsters the bottom line, too, New
York Times, December 31, 2003; quert.nytimes.com/gst/abstract.htmlres=F60911F93A5A0C728FDDAB0994DB404482
Deyo R et al.. Spinal-fusion surgery - the case for restraint. New England Journal
of Medicine. 2004;350(7) :722-6.
The BackLetter 19(3) : 30,2004.