要旨
心理・社全的要因が錯綜した慢性疼痛患者は、医療の治療対象から排除される傾向がある。これらの対象者にリハビリテーションチームが治療契約を結んで、その枠組みの中で心理的な「拘えの環境」を作る3ヵ月プログラムを実施した。認知行動療法にカウンセリングを併用して、自己の内的世界への直面化を促しつつアイデンティティの確立と生活の再構築を図る。症例ではカウンセリングにより、母親の死への喪の作業とストレスコーピングヘの気づきなど人間の精神構造についての理解を促した。第1期治療終結時に引き起こされた怒りを受け止め言語化することによって本治療の意味を理解させ、第2期追加治療時における疼痛行動の劇的改善と積極的な治療への参加に効果があった。
キーワード:慢性疼痛、カウンセリング、心理・社会的アプローチ
はじめに
1.対象者の特徴
2.「長期プログラム」の特徴
3.治療枠組みについて
4.症例紹介
表3現病歴
5.考察
本稿で紹介した長期プログラムは,慢性疼痛患者への心理・'社会的な側面に焦点を当て、治療チームが患者とともに社会復帰に向けて協働作業をしていることが特徴である。表2に提示したとおり、初期の治療方針ではそれぞれのスタッフが個々に専門的なアプローチをしているように見えるが、病んでいる心と身体の双方向から同時に関わることによって、孤独でほとんど寝たきりであった状態からスタッフを通して人とのコミュニケーションが可能になり、結果として日常生活自立に移行している。この協働作業では家庭や職場、地域社会から孤立していた患者が「抱え環境」を体験し、自己を安心して取り戻す作業を促す。従来の治療者主導による身体機能改善目的のリハビリ訓練と比較して、本手法では「遊び」の要素を多分に含んだ卓球、スタッフ等との外出,パーティーの準備(表2)といった形をとる。患者は受け身的な医療概念から治療の主体が自分自身であることを目に見える形で経験し、医療依存からの認知的転換がなされる。この中で心と身体における過緊張を無意識に解きほぐしリラックスしていく。
本アプローチにおいて,カウンセラーは本人およびチーム成員に患者の精神構造への理解を促し、患者がその成長過程で負ってきた心傷体験の癒しとしての関わりを持つ。この対応によって患者は自分自身の心と身体に起こっている症状に深く納得することができるのである。
おわりに
慢性疼痛患者への心理・社会的アプローチについて述べた.。昨今は経済効率が優先される結果・通常め医療の枠組みでの慢性疼痛への対応はますます困難になりつつある。慢性疼痛を総合的に扱う受け皿つくりが早急に求められている。今回述べてきた長期プログラムはそのようなシステムの中でこそ生かされていくのではないかと考えている。
稿を終えるにあたり,終始臨床をともにしご指導をいただいた東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科の本田哲三先生、作業療法士 水品朋子先生、理学療法士 鈴木博行先生、医療ソーシャルワーカーの朝比奈朋子先生に深謝いたします。
(加茂)
それにしても壮絶な病歴ですね。椅子から立ち上がったばっかりに・・・・。ヘルニアと痛みは関係ないと思います、やっぱり。
慢性化したのは
- 急性痛の時の介入の間違い?
- 個人的要因(環境、不安など)
手術の技術的な問題ではないと思います。
http://junk2004.exblog.jp/d2004-12-11