腰痛の治療を受診する患者の主な目的の一つは、腰の症状がこれからどうなるかを知ることである。不幸にも彼らは正確かどうか疑わしい説明を聞かされていることが多い。
最近、SeattleにあるGroup Health Cooperative of Puget SoundのMichael Von
Korff博士らは、初期治療を受ける患者の最初の受診目的を順位付けて評価するように求めた。「ほとんどの患者が正確な情報を欲しがっていました。患者の76%が非常に重要あるいは極めて重要と回答した目的は、腰痛がどのような経過をたどるか知りたいという事でした」。Seattleで最近開かれた腰痛プライマリーケア研究に関する国際フォーラムでVon
Korff博士は報告した。「予想される腰痛の経過を知ることは、腰痛疾患に対する医学的診断を受けることより重要性が高く評価されていました」。
患者が知らされる予後はかなり差がある。ときには過度に悲観的な場合もあるが、楽観的すぎることの方が多い。「腰痛は2,3日で治るでしょう。恐らく再発しないでしょう」というのは、まさしく典型的な予後である。「腰痛の90%は90日以内でなくなります」というのも同様である。
腰痛の経過の特徴として、初回発作からは速やかに回復することが多いと過度に強調し、プライマリーケアに訪れる腰痛患者は一般に再発患者であることを過小評価している場合が多い。
不幸なことに、患者は腰痛の経過について正しくない予後を聞くと、様々なマイナスの影響を及ぼす。1週間で回復すると期待していたのに、6週間後も症状があると、患者は不必要な手術や費用のかかる他の治療法へ追い込まれてしまう。同様に患者の気分や、通常の活動や仕事を再開する意欲にも影響を与える。
Von Korff氏とKathleen Saunders氏は、最近、急性腰痛患者の初期治療の段階での予後を検討した一連の研究について文献調査を行った。彼らが得た結果は、症状が速やかに消えるという通常の見方と一致しなかった。
彼らは、多くの医師が考えているより短期における成績はもっと複雑であることを発見した。Von
Korff氏とKathleen Saunders氏によれば、腰痛を初めて受診してから1ヵ月で大部分の患者が「かなり改善する」が、
2/3〜3/4は1ヵ月後に少なくとも軽度の腰痛があり、1ヵ月経過時点で症状のあった患者の約1/3には中等度の疼痛が認められた。20〜25%の患者で1ヵ月後にかなり活動が不自由であった。
彼らが調査した試験における長期成績では、多くの患者が1年以上経過した後でさえも、何らかの腰痛症状が継続していることを示していた。「約1/3は少なくとも中等度の間欠的、あるいは持続的な疼痛を訴えており、15%は重度の腰痛が続いていました」と、Von
Korff氏とKathleen Saunders氏は報告した。
彼らは、彼らの考える“プライマリーケアの患者における急性腰痛の予後を正確に特徴づけている4項目の声明”を作成した(下記参照)。
(1995年、Seattleにおける腰痛プライマリーケア研究に関する国際フォーラムで発表、論文は未発表)。
The BackLetter,10(11):124.1995.