英国の研究によると、夜間痛は健康に対する重大な脅威ではない

Night Pain Not a Serious Threat to Health in UK Study 


最近英国で行われた研究は、腰痛クリニックを受診する患者において夜間痛がいかに一般的であるかを物語っている。同じく、夜間痛の存在は多くの場合、対処が困難であることを示している。本研究において、夜間痛は疼痛および活動障害の増大と関連したが、重篤疾患の徴侯ではなかった。

これは、ある程度大規模な研究であるが、いくつかの点では症例数が少なすぎることが判明した。夜間痛は常に重篤な病理学的異常の現れであるとの認識にはっきりと異議を唱えている。しかし悪性疾患が検出された患者がいなかったため、いくつかの種類の夜間痛、すなわち“弱まることのない”“重症もしくは進行性”または“メカニカルではない”疼痛が癌の指標としてより優れているかどうかを明らかにするには、症例数が不足していた。

I.J.Harding博十らは、腰痛のプライマリケア診療所を受診した482例の患者について評価を行った。夜間痛の頻度および持続時間を記録しただけでなく、疼痛、活動障害、およびQOLのスコアも入手した。必要な場合にはMRI検査も実施した(Harding et al.,2004を参照)。

全体では、482例の患者のうち213例が夜間痛を経験したことがあり、90例には毎晩腰痛があった。夜間痛が患者に非常に大きな打撃を与えていることが判明した。常に夜間痛があると回答した患者は1晩に平均2.5回目が覚めていた。それらの患者は夜間痛を報告しなかった患者と比較して、疼痛および活動障害のスコアも高かった。

しかし研究者らは、夜間痛と関連のある重篤な病理学的異常を同定することはできず、特定の脊椎患があると夜間痛が現れやすくなるというエビデンスを見出すことはできなかった。本研究で夜間痛を報告した患者の大多数は、多様な変性性椎間板疾患を有するだけであった。Harding博士によると、“いずれか1つの診断との特別な関連は認められなかった”という。

Harding博士らは、夜間痛は重大な疾患の感度のよいマーカーであるという考え方に異議を唱えた。“患者にとっては重大でも、夜間痛の症状は腰痛のプライマリケア診療所における重篤な脊椎疾患の診断の際にはほとんど役立たないだろう”と博士らは結論づけた。

Harding博士は、ポルトガルのポルトで開催された国際腰椎研究学会の年次総会で本研究を発表した。討論の中で、英国の脊椎外科医Gordon Findlay博士は、この研究は夜間痛の一面しか見ていないと述べた。適切な経過観察研究を行って、重篤な病理学的異常を有する患者の初診時における夜間痛の役割を検討することをGordon Findlay博士は提言した。何らかの種類の夜間痛が癌の特異的な危険信号となりうるかどうか、現時点では不明である。

参考文献:

Harding IL et al., Is night pain a sensitive marker for serious spinal pathology in a back pain triage clinic?, presented at the annual meeting of the International Society for the Study 
of the Lumbar Spine, Spine Week 2004, Porto, Portugal; as yet unpublished. 


The BackLetter 19(10): 116, 2004.


(加茂)

子どもの成長痛、五十肩、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)、変形性膝関節症などにも夜間痛がみられます。

http://junk2004.exblog.jp/3150434/

加茂整形外科医院