亀背形成術:エビデンスはどこにあるのか?

Kyphoplasty: Where ls the Evidence? 


脊椎の新しい治療技術は厳密な臨床試'験による厳しい検査を受けなければならない

椎体形成術(vertebroplasty)および亀背形成術(kyphoplasty)は、無作為比較研究(RCT)で得られた有効性と安全性のエビデンスがないにもかかわらず、疼痛性の脊椎椎体圧迫骨折の治療法としてよく知られるようになった。

残念ながら、これらの骨折修復治療の臨床的有効性に関するほとんどのエビデンスは、症例報告とコホート研究で得られたものである。厳密な比較対照試験はなかなか現れない。

このことは、これらの治療法が受け入れられる妨げにはならなかったようである。2002年には米国だけでも約38,000例の椎体形成術と16,000例の亀背形成術が行われた(Nussbaum et al.,2004を参照)。

2000年のAmerican Journal of Neuroradiologyで、椎体形成術の支持者がこの方法をRCTによって厳密に試験すべき時が来ていると提言された(Deyo and Jarvik,2000を参照)。その後まもなく、Mayo Clinicの研究者らがこの難しい課題に取り組み、現在圧迫骨折の治療において椎体形成術を保存療法と比較するRCTが進行中である。

亀背形成術はどうなのか?

しかし亀背形成術はどうなのだろうか。椎体形成術は、椎体にセメントを経皮的に注入することによって、圧追骨折を安定化し症状を軽減することを目的としている。亀背形成術は椎体形成術をさらに一歩進めたものである。椎体の安定化だけでなく、失われた椎体の高さおよび前後方向の配列の回復も試みる方法である。

亀背形成術では、外科医は膨張可能なバルーンをカニューレを通して椎体に挿入し、椎体の高さの回復を試みる。外科医はバルーンによって作られた空洞にセメントを低圧で注入して充填し、椎体を安定化する。

より良いエビデンスを再度要請

亀背形成術に関するより良いエビデンスが再び求められている。Fergus McKiernan博士とTom Faciszewski博士は最近Spine誌で、亀背形成術に関する厳密な研究が必要だと訴えた。両博士は特に、亀背形成術の後、隣接または遠隔の椎間レベルに椎体骨折が発生する危険性が増大することを明らかにしたDavid Fribourg博士らの研究について論評した(McKiernan and Faciszewski,2004を参照)。

McKiernan博士とFaciszewski博士は、より良いエビデンスがなければ、亀背形成術の利害得失の評価は困難だと指摘した。“亀背形成術が実施できるようになったのは1998年である。それから5年経ち70,000例以上の椎体の治療が行われたにもかかわらず、亀背形成術が保存療法または椎体形成術よりも優れていることを実証する適切に設計された研究は報告されていない”と、博士らは言及している。

脊椎の新しい治療技術が標準的な臨床診療に紛れ込み、厳密な試験も行われないままそこに留まることのできる時代は過ぎ去った。この研究者によると、“脊椎の新しい治療技術が専門医の信頼を得て患者の健康に寄与し、すべての人の医療保険で費用が支払われるようになるためには、厳密な臨床試験と専門医による精査に耐えなければならない”。

理想的には、この種の精査は、治療方法が市場に登場する前に行われるべきである。しかし、日常の臨床診療で行われている治療方法でも、質の高い比較対照研究によって評価することはまだ可能である。

参考文献:

 Deyo RA and Jarvik JG, Cementing the evidence: time for a randomized trial of vertebroplasty,  American Journal of Neuroradiology, 2000; 21 : 1373-4. 

McKiernan F and Faciszewski T. Point of view, Spine, 2004; 29(20): 2277. 

Nussbaum DA et al., A review of complications associated with vertebroplasty and kyphoplasty as reported to the Food and Drug Administration medical device-related website, Journal of Vascular Interventional Radiology, 2004; 15(1 1): 1 185-92. 


The BackLetter 19(12): 139, 2004. 

加茂整形外科医院