Is Back Pain Preventable? European Guidelines Offer a Fresh View of the Evidence 
    
        
          
      
          
            | おそらく腰療に関する考え方、特に腰痛と活動および労働との関係に関する考え方における認識の改革が必要になるだろう。 | 
          
          
            | “腰痛の原因こ関する害をもたらす考え方、および従来の介入仁よって得られる可能性のある効果についての非現実的な期待から離れる必要がある。むしろ、腰痛による有害な結果を抑制する可能性のある有望な介入に注意を向けるべぎである。” | 
          
        
        患者はしばしば腰痛は予防できるのかと質問する。多くの医師、医療機関、および政府当局は予防できると主張する。
        そして腰痛を防ぐためのあらゆる種類のアドバイスを行う。米国の医療機関が一般的に推奨するのは、減量、禁煙、良い姿勢、背筋の強化、上手に物を持ち上げる技術、そして過度の仕事上の負担の回避などである。
        最も広く知られている予防勧告にはいくつかの共通点がある。それらは腰痛の“損傷モデル”に照準を合わせている。脊椎にかかる身体的ストレスを軽減することを必ず推奨している。そしてそれをはっきりと支持する知見は科学的な文献の中には見つかっていない。
        現在までの腰痛予防は失敗に終わっており、予防に関する科学的エビデンスを再調査し、腰痛による障害を緩和するためのより有効な手段を提示すべき時がきている。
        一次予防は不可能なのか
        欧州委員会が後援したエビデンスに基づく腰痛予防ガイドラインの最新版では、従来の勧告に代わる目を見張るような提言を行っている。ガイドラインでは、現在の知識レベルから考えて腰痛の一次予防はおそらく現実的な目標ではないだろうと認めている。
        Kim Burton博士が義長を務めた集学的ガイドライン委員会によると、“一般的にみられる腰痛の全般的な性質および経過は、その発生(初めての症状発現)を防止できる範囲が限られていることを示している”という。
    
        腰痛の根本原因はまだ同定されていないためそれらに直接働きかけることは不可能であると、報告書は指摘している。疫学調査によって、腰痛および関連する活動障害の発現の幅広い危険
        因子の一覧が明らかになっているが、ガイドラインはこれらの危険因子を修正しても予防効果は得られないだろうと述べている(Burton     
        et al.,2004を参照)。
    
        
          
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               主要な予防方法 
              
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腰痛の一次予防(すなわち最初の発現を予防すること)は、現在の知識レベルを考えるとおそらく現実的な目標ではないだろう。  
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腰痛の根本原因はまだ明らかになっていないため、危険因子の修正が必ずしも予防につながるとは限らない。  
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腰痛によって生じるマイナス面(すなわち就労障害、受診の繰り返し、失業)の予防についての見通しはかなり明るいように思われる。  
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腰痛という総合的な問題の多次元的な性質を考えると、1種類の予防的介入が、大きな影響を与える可能性は低い。  
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最も有望な介入には、身体活動と運動療法、および現代的な生物心理社会的教育プログラムが関係する。  
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現在までに研究がなされた最も有望な介入ですら、科学的研究においてわずかな効果しか認められていない。 
                   
                  出典:Burton et al.,2004     
               
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        楽観主義の理由
        しかし報告書は、予防活動に関して条件付きの楽観主義には理由があると指摘する。腰痛そのものは避けがたい事実かもしれないが、その最も厄介な結果すなわち過剰な受診行動、再発、活動障害、失職、早期退職の中には少なくとも部分的には予防可能なように思われるものもある。
        腰痛という幅広い問題の多次元的な性質を考えると、1種類の予防的介入に抑制する能力があるとは思われない。しかし、身体活動の促進から仕事をよりフレキシブルで融通の利くものにするための“生物心理社会的”教育活動まで、期待できる方法が複数ある。
        人間工学に関する不十分なエビデンス
        労働者の腰痛に関してガイドライン委員会は、広く行われている身体的人間工学的介入または組織的な修正を予防手段として推奨するための十分なエビデンスを見出すことができなかった。ガイドライン委員会によると、“腰痛の有病率と重症度を低下させるために身体的人間工学的介入のみを推奨するエビデンスは不十分である。職場による介入が腰痛の軽減に有効であるという相反するエビデンスも存在する”という。
        しかしガイドラインは、腰痛発作の後に仕事を再開しやすくするための手段としての一時的な業務の修正を支持している。委員会はその論拠としてNortin Hadler博士の有名な意見を引用している(Hadler,1997を参照)。
   
        “人間工学がアウトカムに明確に影響するというエビデンスに関係なく、委員会は、`仕事は我々が元気なときには快適でなければならず、具合の悪いときには融通が利かなければならない'という実際的な意見を支持し、仕事の早期再開を促進するための仕事の修正計画を練る際に、人間工学が有用であることを認識している”。
        運動療法は労働考にとって有効な介人なのだろうか
        委員会は、労働者における腰痛、腰痛の再発、および度重なる病欠を防止するための身体的運動療法を支持する質の高いエビデンスを見出した。これらの支持は運動療法が画期的な予防方法であるように思わせる。しかし労働者のための運動療法プログラムは、現在までのほとんどの科学的研究においてわずかな効果しか認められていないことを認識することが重要である。運動療法は有望な介入であるが、万能薬ではない。
        腰痛を有する労働者のための様々な多次元的および集学的介入によって、肯定的な結果が報告されている。これらのプログラムでは、教育、運動療法、訓練、疼痛管理、仕事の再設計、およびまたは業務の修正を様々な形で組み合わせて提供した。委員会はこれらの研究における肯定的な結果に同意を示したが、これらのプログラムの推奨すべき側面あるいは介入のバランスを決定することは不可能であると強調した。
        一般集団における予防
        一般集団における予防に関して、委員会は少数の有望な方法を見出した。ガイドラインの著者らは腰痛による病欠を防止する手段として、また更なる発作の発生およびまたは持続を軽減する方法として、身体的な運動および活動を推奨した。しかし著者らは、特定の種類または強度の運動療法を支持する説得力のあるエビデンスを見出すことはできなかった。
        新ガイドラインは、腰痛について従来の生物医学的/生体力学的な見方をする腰痛教室の利用に反対する勧告を行った。委員会は、現代的な生物心理社会的原則に基づいた教育的な情報提供プログラムについてはより熱心であった。
        委員会は、予防のために腰部コルセットまたはベルトを使用することを支持する説得力のあるエビデンスを見出すことができず、一次予防のための特別な椅子またはマットレスの使用を支持する十分なエビデンスは存在しなかった。委員会メンバーは、腰痛疾患を予防するための靴の中敷きの使用を支持するエビデンスを見出すことはできなかった。
        広範な認識の改革が必要か
        欧州ガイドラインの結論は的確で理に適っているように思われるが、患者、医師、および政策立案者がそれを納得して受け入れるのは難しいかもしれない。腰痛予防に関する誤解は現代文化に広く深く根を下ろしている。政府および企業は効果が証明されていない予防プログラムの普及のために毎年数億ドルの費用を投じており、改革に抵抗する可能性がある。
        ガイドライン委員会は、予防分野における進歩のためには、おそらく腰痛の性質および原因に関する捉え方における広範な変化が必要だろうと指摘した。20世紀のほとんどの期間、医学界、政府、および経済団体は前述の腰痛の損傷モデルを受け入れていた。このモデルでは、腰痛は通常、何らかの外傷性事象または機械的ストレスが原因で生じるとされる。医師は、推定された損傷が“治癒し”痛みが消失するまで安静にして、通常の身体活動を避けるよう患者にアドバイスした。
        過去四半世紀における科学的研究から、このモデルが非現実的であり害を及ぼす可能性があることが示唆されている。しかしこのモデルは、先進諸国、特に職場では生き長らえている。腰痛についての不適切な捉え方を一掃する過程には長時問かかるだろう。
        “おそらく腰痛に関する考え方、特に腰痛と活動および労働との関係に関する考え方における認識の改革が必要になるだろう。我々は、腰痛の原因に関する害をもたらす考え方および従来の介入によって得られる可能一性のある効果についての非現実的な期待から離れる必要がある”と、ガイドライン委員会の議長を務めたBurton博士は述べている。
        “我々は無効または有害な従来の予防方針を採用しつづけるべきではない。むしろ腰痛による有害な結果を制限する可能性のある有望な介入に注意を向けるべきである”と、英国のUniversity of Huddersfieldの人間工学の研究者は述べている。
 
        多くの重要な問題に関する更なる科学的研究が切実に必要とされている。そして新しいガイドラインでは、一般集団、労働者、および学齢期の青少年における腰痛の予防に関してさらに研究を行うことを特に推奨している。そこから読みとることのできる最終的なメッセージは、腰痛予防は全く未完成の状態であるということである。腰痛分野に関わるあらゆる人が、予防に関する知識は初歩の段階であり不完全であることを認識すべきである。
        参考文献:
        Burton AK et al., on behalf of COST B13 Working Group 3. European Guidelines  
        for Prevention in Low Back Pain. Sponsored by the European Commission, Research Directorate-General,  
        Department of Policy, Co-ordination and Strategy; 2004;  www.backpaineurope.org. 
        Hadler NM, Back pain in the workplace: What you lift or how you lift matters far 
        less than whether you lift or when, Spine, 1997; 22:935-40. 
        The BackLetter 20(3): 25, 28-3 1, 2005.