青少年の腰痛予防は?

What About the Prevention of Back Pain Among Children and Adolescents? 


欧州の新しい腰痛予防ガイドラインは、特に青少年を対象にした予防プログラムについて賛否両論の興味深い議論を提示している。

過去15年間にわたる活発な研究によって、若年性腰痛についての見方が変化してきた。研究者および臨床医は、かつては学齢期における腰痛をまれで場合によっては重篤な医学的問題の可能性があるとみなしていた。しかし、過去10年間の科学的研究によって、腰痛が若者においても成人とほとんど同じくらい多くみられることが明らかになっている。そして小児の腰痛はこれまでの印象とは異なり通常は重篤な疾患ではない。

近年医師および研究者は、小児における腰痛の有病率を低下させ若者の生活に及ほす影響を制限するため様々なプログラムを推奨してきた。しかし学齢期における腰痛の予防を支持するエビデンスはどのくらい強力なのだろうか。小児の腰痛に関するエビデンスを調査した後、欧州ガイドライン委員会は青少年向けのどの予防プログラムも支持する十分なエビデンスを見出すことはできなかった。

しかし、腰痛または脊椎の疾患に関心のある人なら誰でも、利用可能な研究に関する議論が有益であることがわかるだろう。そのような議論によって現在までのエビデンスの弱点が明らかになり、更なる研究の方向に関する様々な示唆が得られるからである。

学齢期の小児における予防の章の主な結論を以下に紹介する:

・リュックおよび通学鞄:リュックまたは通学鞄の重量制限を定めることに賛成または反対する決定的エビデンス、特別な種類の通学鞄を選択することに賛成する決定的エビデンス、または通学鞄を持ち歩く特別な方法に賛成する決定的エビデンスは存在しない。

・教育:小児における腰痛およびその結果を予防するための教育的介入を推奨するエビデンスは不十分である。

・減量:予防的介入としての減量に賛成または反対するエビデンスは存在しない。

・スポーツヘの参加:スポーツをすることや身体をよく動かすことによって小児の腰痛を予防できるというエビデンスはない。激しいスポーツトレーニングは腰痛疾患のリスクを増加させる可能性があるが、競技スポーツヘの参加について具体的な制限を推奨するためのエビデンスは不十分である。

・健康維持(fitness):健康を維持することにより青少年の腰痛を予防できるという説得力のあるエビデンスは存在しない。

・筋力の強化:新しい予防ガイドラインによると、“予防的介入として筋力の強化を推奨することに賛成または反対するエビデンスは不十分である”。

・柔軟性/可動性:委員会は、予防方法として柔軟性および可動性の修正に賛成または反対するエビデンスを見出すことができなかった。

・座位時の姿勢/座って行う活動:座位時の姿勢の修正または座って行う活動の削減によって、小児の腰痛が予防されるというエビデンスは不十分である。

・危険因子としての労働:いくつかの報告において、労働が小児の腰痛の危険因子であることが示唆されていたが、委員会は青少年における様々な作業課題の妥当性に関する勧告を正当化するエビデンスを見出すことができなかった。

・危険因子学校の備品:生徒用の備品の改良を推奨することに賛成または反対するためのエビデンスは不十分である。

心理社会的因子の修正:心理社会的因子の修正によって予防効果を得ることが可能であるという決定的エビデンスは存在しない。

・成人期の腰痛を予防するための小児期における介入:青少年に対して実施した介入が成人期以降の腰痛を予防するという決定的エビデンスは存在しない。

・喫煙:禁煙キャンペーンによって学齢期の青少年の腰痛が予防されるというエビデンスは存在しない。


The BackLetter 20(3):29.2005.

加茂整形外科医院