腰痛のある大多数の人々は、腰痛の治療を受けようとはしない。腰痛および非特異的脊椎疾患の治療における現代医療の成績がふるわないことを考えると、これは賢い決断だという意見も聞かれる。
医学的治療よりも自己治療を選択するのは腰痛に限ったことではない。Blair H.Smith博士とAllison M.Elliott博士はPain誌の最近の論説において、慢性疼痛を有する人の大多数は決して医師にかかろうとしないことを指摘した。彼らは、可能な限り最良の独自の情報源を使用している(Smith
and Elliot,2005を参照)。
このパターンを考えると、一般の疼痛患者がどのようにそれらの不快感に対処しているかを調査することは重要である。そして公衆衛生プログラムが、疼痛の自己管理に関する有用な情報を提供しているかどうかを調査することも重要である。
オーストラリアの地域住民を対象にした研究
オーストラリアの地域住民を対象にした最近の研究において、慢性疼痛を有する人々のうち半数をわずかに超える人々が、過去6ヵ月間に医師を受診していたことが明らかになった。約4分の1は代替医療の専門家を受診していた(Blythe
et al.,2005を参照)。
自已治療を行った人々において、最も多くなされた治療は薬物療法(47%)、安静(31.5%)、および温冷湿布(23.4%)などの受動的治療であった。最も多くなされた能動的治療は運動療法であり、25.8%の人が行っていた。
能動的治療を受けている患者は、活動障害度が低く、苦痛が少なく、薬物療法への依存度が低く、および正式な医療をあまり用いてなかった。著者のFiona
M. Blytheらによると、“受動的治療法を受けている患者は、疼痛に関連した重度の活動障害(調整オッズ比2.59)および疼痛に関連した受診が増加(調整オッズ比2.9)しているようだった”という。
因果関係はあるのだろうか?
横断的研究では、因果関係に関する結論を裏付けることはできないことに注意するのが重要である。能動的な疼痛管理の方法がアウトカムの改善につながると推論したくなるものであり、おそらくそうなのだろう。しかし、本研究で能動的治療および受動的治療を行った被験者は、異なる特性を有していた。例えば、能動的治療を行った被験者のほうが社会経済的地位が高い傾向がみられた。
著者らは、多くの慢性疼痛患者は最適な疼痛管理法を使用していないと示唆している。それらの患者は症状を管理するための効果的な能動的方法について指導を受けるべきである。Blythe博士らによると、“我々は、慢性疼痛の積極的な自己管理法に関する認識と理解を深めるための地域密着型の方法に、さらに注意を払うよう強く推奨する”という。
Smith博士とElliott博士による論説でも、地域社会において良識のある自己管理法を積極的に推進するよう推奨している。両博士は、オーストラリアのビクトリア州のキャンペーンが、一般の人々および医療関係者の腰痛の捉え方を変化させることに成功したことを指摘した。インターネットを利用した推進キャンペーンも役割を果たす可能性があるだろう。Smith博士とElliott博士は、積極的な予防方法を強調する教育用パンフレットにも期待できると指摘している。
参考文献:
Blythe FM et al., Self-management of chronic pain: A population-based study,
Pain, 2005; 1 13: 285-92.
Smith BH and E1liott AM, Active self-management of chronic pain in the community, Pain,
2005; 1 13: 249-50.
The BackLetter 20(4): 40, 2005.
(加茂)
非特異的脊椎疾患:悪性腫瘍、骨折、感染症を除いたという意味でしょう。