腰痛と長期病欠

Back Pain and Long-Term Sickness Absence 


英国は、腰痛に関連する長期就労障害の論戦が進んでいる典型である。
“就労不能給付金を6ヵ月以上受給している入々のうち、その後5年以内に職場に復帰するのぱ20%にすぎ'ない”。

長期病欠の削減は、腰痛危機に取り組む際の経済面でのただ1つの最重要目標かもしれない。

永続的な障害は非常に高額の費用を要し、障害手当請求者の健康にしばしば害を及ぼす。

BMJ誌の最近の論説では、長期病欠に法外な費用がかかることに焦点を当てている。長期欠勤している労働者はごく少数であるが、長期欠勤にはすさまじいほど高額の費用がかかっている(Henderson et al.,2005を参照)。

Max Henderson博士らによると、“[英国では]毎週100万人が病欠届を出しており、そのうち3,O00人は6ヵ月後も仕事を休んでいる”という。

欠勤が6ヵ月を超えるというのは不吉な兆候である。論説委員らによると、“就労不能給付金を6ヵ月以上支給されている人々のうち、その後5年以内に職場に復帰するのは20%にすぎない”という。

これらの著者が指摘しているように、長期病欠は欠勤日数からみると全体の3分の1にすぎないが、これにかかる費用は病欠に関わる全費用の約75%を占める。

英国は、腰痛に関連する長期就労障害の論戦が進んでいる典型である。英国では腰痛疾患に対する傷病手当の額が1970年代末〜1990年代初めにかけて急増した。1978-1979年〜1991-1992年までに、腰痛に関連する障害給付額は208%増加した。

しかしそれ以降、腰痛に関連する障害給付金の新規認定は急激に減少している。英国における腰痛疾患によるすべての就労不能および障害給付金の新規認定は、1994-1995年〜2000-2001年までに42%減少した。そして、同じ期間にすべての疾患に対する障害給付金は約25%減
少した。

英国では現在、精神疾患のほうが腰痛よりも障害保険請求を占める割合が大きい。英国における精神疾患の有病率について、明らかな増加は全体としては認められないが、精神疾患に関係する申請件数は近年約2倍に増加した。

参考文献:

Henderson M et al., Long-term sickness absense, BMJ, 2005; 330: 802-3. 

The BackLetter 20(5): 5 1, 2005. 

加茂整形外科医院