椎間関節注射は止めるべき時か?

Time to Stop Facet Injections? 


ステロイドと局所麻酔薬の椎間関節への注射は、ここ30年間、腰痛の治療法として流行り廃りを繰り返してきた。最近の報告で脊椎注射の手法が現在急増していることは、椎間関節への注射が再び大流行する可能性があると示唆している。しかし、その治療上の利点を支持するエビデンスは相変わらず微々たるものである。

オーストラリアの研究者Nikolai Bogduk博士による最近の論述的レビューでは、これらの注射を使用している医師に、止めよと、簡潔な助言をしている。

“腰椎の関節内ステロイドの見かけ上の有効性は、模擬注射と変わらない。これらの方法を引き続き使用することを正当化する根拠はない”と、オーストラリアの解剖学者は主張した(Bogduk,2005を参照)。

Bogduk博士は、これらの注射には確かな生理学的根拠がないことを指摘した。博士らは、無作為比較研究における裏づけを見出すことができず、観察研究における限られた裏づけしか見出せなかった。そして治療研究の結果は、椎間関節から発する疼痛の有病率に関する研究の結果との整合性が低い。

椎間関節へのステロイド注射に関する科学的エビデンスにはギャップがあるとBogduk博士は指摘した。“関節内ステロイド注射が、腰椎の[椎間関節]の疼痛を疑いなく有する患者[細部ま
でコントロールしたブロック処置によって実証]に、真の利益をもたらすかどうかを検討した研究者はいない”とBogduk博士は述べた。

この要件を満たす腰痛患者のサブグループが存在する可能性がある。しかし、コントロールされたブロックを行い麻酔薬の用量を注意深く調節する緻密な大規模研究において、それらが同定される必要があるだろう。その上で、椎間関節の疼痛が実証された患者を二重盲検無作為比較研究の対象にすべきだろう。椎間関節に起因する腰痛の有病率が非常に低いことを考えると、これらの研究にはこのような症例を集めるという面で難しい課題があるだろう。

“当面は、腰痛治療のために関節内ステロイド注射を無差別に使用することは正当化されない”と、Bogduk博士は結論づけた。もし医師の目的が注射によるプラセボ反応を引き出すこと
だけなら、より良い、より安価な、より安全な選択肢があると、博士は指摘した。

参考文献:

Bogduk N, A narrative review of intraarticular 'corticosteroid injections for low back pain, Pain Medicine, 2005; 6:287-96. 

The BackLetter 20(9): 97, 107, 2005. 

加茂整形外科医院