頸部痛の世界的な有病率

The Worldwide Prevalence of Neck Pain 


頚部痛は西洋諸国仁おける大きな公衆衛生問題である

一生頸部痛に縁がない人は幸運である。“頸部痛は一般集団においてよくみられる症状である”と、頸部痛の文献に関する初めての大規模な体系的レビューの著者らは結論づけている。

Rene Fejer博士らは56の研究を調査し、6種類の期間内における頸部痛の有病率(点有病率、および1週問、1ヵ月間、6ヵ月間、1年間、ならびに生涯有病率)の範囲を計算した。可能な限り、小児、青年、成人、および高齢者について、別個に有病率の範囲を計算した。

頸部痛の文献の多様性、頸部痛の様々な定義、および頸部痛の調査方法の相違を考えると、範囲は大きい。Fejer博士らは、成人における頸部痛の点有病率(すなわち調査の時点での頸部痛)が5.9〜22.2%の範囲であることを見出した(Fejer et al.,2005を参照)。

成人の1ヵ月有病率は15.4〜41.1%の範囲であった。成人の6ヵ月有病率は6.9〜52.2%の範囲であった。

“22の研究において1年有病率が推測された。頸部痛の極めて一様な定義に基づいて、成人集団全体の有病率は16.7〜75.1%の範囲であった”と、著者らは指摘している。

一般的に、頸部痛の有病率は期間が長いほど高かった。言い換えると、頸部痛の1年有病率の計算値は、6ヵ月、1ヵ月、1週、および点有病率の計算値よりも高いだろう。

生涯有病率を除いたすべての期間に関して、女性は頸部痛の有病率が男性よりも高かった。女性で他の複数の形での筋骨格系疼痛の有病率が高かったことは、疼痛知覚には男女差があることを示唆していると、著者らは述べている。

このレビューは、定義および方法論をさらに標準化した、全世界の頸部痛の有病率に関する、より質の高い研究が必要であることを浮き彫りにする。“これによって、異なる国および文化間の比較が容易になると考えられ、最も重要なこととして、臨床医、研究者、および政治家が、一般集団における頸部痛の発生率と影響の両方について、意味のある詳細な実態を知ることができるだろう”と、Fejer博士らは述べている。

世界中の科学者は、スカンジナビアの研究者らを更なる知識を追求するための手本にすることができる。このレビューの選択基準を満たした56報の論文のうち、ほぼ半数(46%)がスカン
ジナビアの論文であった。およそ4分の1(23%)が欧州の残りの地域、16%がアジア、11%が北米の論文であった。オーストラリアの論文が2報、イスラエルの論文が1報あった。

ほとんどの研究は先進国で行われたものである。いわゆる第二世界および第三世界の発展途上国における同様の研究が大いに必要とされている。頸部痛は西洋諸国における大きな公衆衛生問題である。現在のところは目立たないが、世界の他の地域においても、同様の重荷を課す可能性が高い。

キーポイント
  • 頸部痛の有病率に関するエビデンスは多種多様である。結果として、有病率の
    範囲はバラつきがある。すべての社会および国々をまとめた頸部痛の有病率を
    表す、ただ1つの正確な数字はない。
  • 新しい体系的レビューにおいて、成人の研究における頸部痛の点有病率は、5.9〜
    22.2%の範囲であった。成人における頸部痛の1ヵ月有病率は6.9〜52.2%の範囲
    であった。1年有病率は16.7〜75.1%の範囲であった。頸部痛の有病率は、有病
    率の評価期問が長くなるにつれて上昇する。
  • 女性は生涯有病率を除くすべての期間における頸部痛の有病率が男性よりも高い。
  • 国および文化問の比較を容易にし、臨床医、研究者、および政治家がより良い
    情報を入手できるようにするため、研究の定義および方法論の標準化を行う必
    要がある。
  • 頸部痛の有病率に関する、質の高い研究の多くはスカンジナビアで行われてお
    り、世界の他の国々はその遅れを取り戻す必要がある。開発途上国における研
    究が特に必要とされている。


参考文献:

Fejer R et al., The prevalence of neck pain in the world population: A systematic critical 
review of the literature. European Spine Journal, 2005, e-pub ahead of print; 
www.springerlink.com/app/home/contribution.asp?wasp=aa42dcf92cf544fc9e878d59e8f 29f 7e&referrer=parent&backt0=issue,25 , 1 1 8 ; journal, I ,62;linkingpublication results,1:101557,1. 

 The BackLetter 20(8): 90, 2005.

加茂整形外科医院