亀背形成術(Kyphoplasty)に関する最初の対照比較研究

First Controlled Trial of Kyphoplasty 


本研究はKyphoplastyを代替治療と比較する無作為比較研究が必要であることを強調

この種類での最初の比較研究において、亀背形成術(kyphoplasty)による治療を受けた患者は、新規の脊椎椎体骨折、その後の受診、および椎骨の形態学に関して、対照群の被験者よりも
優っていた。

Ruprecht-Karls University(ドイツ、ハイデルベルグ)のIngo A. Grafe博士らによると、“集学的チームによって適切に選択された患者に対して、内科的治療に付加する形でKyphoplastyを行った場合、原発性骨粗髭症患者において、永続的な改善がみられ、12ヵ月以上にわたり新規の脊椎椎体骨折の発生および医療サービスの利用が減少する”(Grafe et al.。2005を参照)という。

この結果は、Kyphoplastyを支持する人々だけでなく、この手術に懐疑的な人々からも注目されるだろう。支持する人々は、Kyphoplastyは骨粗髭症性圧迫骨折の安全かつ有効な治療法であるという著者らの結論に賛成するだろう。

しかし、懐疑的な人々は、対照群との比較を行わない研究でしばしば報告されているような、Kyphoplastyによる疼痛および可動性の劇的な改善はみられなかった、という事実を指摘するだ
ろう。そして、新規の脊椎椎体骨折数における利点は、Kyphoplastyそれ自体に関連していたのか、それとも比較的小規模の研究群でみられる骨折の自然経過の差異に関連していたのか、と疑問を呈するだろう。

無作為比較研究の必要牲

本研究は、Kyphoplastyを代替治療と比較する無作為比較研究の必要性を強調する。著者らは妥当な対照群を設定するために果敢な試みを行ったが、患者は自ら治療法を選択した。Grafe博士らによると、“患者を治療群に無作為に割付けなかったため、選択バイアスおよび交絡因子を無視できない”という。

そして、これらの群が、すべてのアウトカム評価尺度において意味のある比較が可能である十分な規模であったという保証はない。2つの治療群に関して、存在する可能性のあるアウトカムの差のデータがなかったため、著者らは正規の検出力の計算を行うことができなかった。しかし、本研究の結果によってこの分野における無作為比較研究が促進されるはずである。

60例の骨粗慈症性骨折患者に関する研究

Grafe博士らは、原発性骨粗髭症と腰痛を有する211例の被験者について、Kyphoplastyの適応かどうかを調べるため、X線、CTおよびMRIによる評価を行った。すべての患者が、12ヵ月以上
前に発生した脊椎椎体骨折または骨折に起因する慢性腰痛を抱えていた(詳細は研究を参照)。

Kyphoplastyの適応となり得るすべての患者を入院させ、Kyphoplastyの潜在的な利害得失に関して詳細な説明を行った。すべての被験者に対して、Kyphoplastyの代替療法として、鎮痛薬の投与および身体トレーニングを含む集中的な集学的保存療法を行うことも提案した。手術の適応となり得た60例のうち、40例がKyphoplastyを選択し、20例が保存療法を選択した。べースラ
インで2群は同様と思われた。

Kyphoplastyの利点

Kyphoplasty群の40例の患者は、合計73の椎体にバルーンとセメントを用いた手術を受けた。Kyphoplastyによる治療を受けた患者は、12ヵ月間の研究期間にわたって有意に改善した。経過観察期間中に、それらの患者の平均疼痛スコア(l00ポイントのビジュアルアナログスケールで最大疼痛をO、疼痛がない場合を100とする)は26.2から44.4に改善した(大部分の疼痛改善は最初の6ヵ月間にみられた)。保存療法群の平均疼痛スコアはほぼ同じ状態を維持し、33.6から34.3へとわずかしか改善しなかった。

著者らは、1年後の経過観察時における臨床的に意味のある疼痛改善とみなす、改善度の定義を明示していない。2群間の差は統計学的に有意であったものの小さな差であるように思われ、
1OOポイントの疼痛スケールでほぼ1Oポイントに相当した。

研究者らは機能を評価するため、考えられる“最悪の”可動性障害をOとし、障害がない場合を100とする、European Vertebral Osteoporosis Sudyの質問表の身体機能に関する部分を使用
した。Kyphoplasty群は6ヵ月後の時点で軽度の改善を示したがこれは12ヵ月後までに消失した。

Kyphoplasty群の患者の可動性は、べースラインの43.8から、術後には54.2に改善し、6ヵ月後および12ヵ月にもほぼ同じ状態のままであった。保存療法群は、べースラインの39.8から6ヵ月後に
は43.8,12ヵ月には44.3と軽度の改善であった。ここでも、臨床的に意味のある改善の定義は明示されていない。

Kyphoplastyを受けた患者は、12ヵ月間の経過観察期間に発生した新規の脊椎椎体骨折が対照群の被験者よりも少なかった。研究者らは再度、すべての腰椎および胸椎の椎間のX線撮影を行った。Kyphoplasty群では682の椎間に7つの新規の脊椎椎体骨折が認められた(7例中6例は、手術を行った椎間に隣接する椎間に発生した)。保存療法群では340の椎問に11の新規骨折が発生した(11例中4例は手術のための評価を受けた椎間に隣接する椎間に発生した)。新規の骨折が発生した患者の割合がKyphoplastyでは17.5%であったのに対して、保存療法群では50%であった。

Kyphoplastyによって新規の骨折のリスクが低下するかどうかは極めて重要な問題である。Kyphoplastyが脊椎の生体力学、活動性、および/または骨の質に好ましい影響を及ぼすことによって、骨折が減少する可能性がある。しかし、これらの2群における新規の骨折の発生率が、治療法の選択以外の因子、すなわち骨の健康、病変のある椎間、骨粗髭症の進行過程における差異などに関係している可能性もある。

研究者らは、2群における12ヵ月の経過観察期間中の総受診回数を計算した。研究者らによると“12ヵ月間の経過観察期問中に、Kyphoplasty群の患者は1患者につき平均5.3回、腰痛のため
に受診する必要があったのに対して、対照群の患者の場合は11.6回であった”。これらの受診は治療法の選択またはその他の交絡因子に関連する可能性がある。

Kyphoplastyを支持する人々と懐疑的な人々でこの研究の意味に関して意見が一致しないことは、良い前兆である。意見の不一致は医学研究に不可欠である。一致することはないかもしれないこれらの解釈は、大規模無作為研究の見通しを、なお一層刺激的なものにする。そして、よく計画された無作為比較研究によって、近い将来これらの問題がさらに解明されることが期待される。

参考文献:

Grafe IA et al.. Reduction of pain and fracture incidence after kyphoplasty: 1-year outcomes of a prospective, controlled trial of patients with primary osteoporosis, Osteoporosis International, 2005; published online August 3, 2005, in advance of print version; www.springerlink.com/app/home/contribution aspwasp367b1fd85cee41c1a50007ffd64f53c&referrer=parent&backto=issue,3,136;journal,1,118; linking publicationresults, 1:102828,1.

The BackLetter 20(lO): 1 12-1 13, 2005. 

加茂整形外科医院