椎体形成術の真相

Honesty About Vertebroplasty 


“将来、この冶療法の真の利点を決定する良いRCTを実施でぎることを望む”

スペインで行われた新規研究は、非無作為研究によって、疼痛性の脊椎椎体骨折の治療を受けた患者のアウトカムに関する有用な情報が得られることを示している。

しかしその結果を受けて、椎体形成術の利点をより明らかにするための無作為比較研究(RCT)が再度要求されることは確実である。そして、この新規研究では手術および保存療法の両方の利点が見出されたため、患者がRCTへの参加を検討することが実際に促進される可能性がある(Alvarez et al.,2006を参照)。

筆頭著者のLuis Alvarez博士は、当初RCTを実施するつもりであったが、治験審査委員会の承認を得ることが難し<、また保険会杜に補償対象にするよう説得する上でも問題が生じた。“スペインでは、法律に基づき、試験の全過程にわたり患者を保険対象に含め保護する保険契約を結ぶ義務がある”と、Alvarez博士は最近Eメールで説明した。

そこで、博士らは最終的に計画を変更し、手術または保存療法を選択した患者のアウトカムを観察する二重コホート研究を行うことにした。“将来この治療法の真の利点を決定する良いRCTを実施できることを望む”と、Alvarez博士は述べた。

101例の患者の二重コホート研究

スペインの研究者らは、椎体形成術を受けることを選択した疼痛性脊椎椎体骨折患者101例、および椎体形成術を提案されたが代わりに保存療法を選択した患者27例について、べースライン特性およびアウトカムを検討した。

全ての被験者は、登録前に6週間の保存療法を行ったが効果は得られず、また活動障害性の疼痛およびそれに一致するMRI像を有していた。椎体の高さが70%以上減少した患者はいなかった。

しかし、著者らが指摘しているように、2群は真に同等ではなかった。手術群の患者の方が重症の疼痛を有し、全体的な健康状態は不良であった。

椎体形成術による遠やかな疼痛軽減

椎体形成術によって、速やかな疼痛軽減と生活の質(QOL)の改善がもたらされたことが研究によって明らかになった。Alvarez博士らによると、“我々の結果は、椎体形成術が重症かつ持続性の骨粗霧症性脊椎圧迫骨折の患者にとって有用であり、速やかな機能回復を可能にしたことを裏付ける”という。

保存療法群のコホートと比較して、椎体形成術群の被験者は、3ヵ月後の経過観察時の疼痛および機能の面で有意に優っていた。しかし6ヵ月または1年後には、それらの患者に保存療法群の患者を上回る利点は認められなかった。

保存療法によるゆっくりとした着実な改善

保存療法継続群の患者はゆっくりとではあったが着実に改善した。Alvarez博士らによると、“我々の結果は、保存療法によって患者の機能が長期にわたりゆっくりとではあったが着実に改善したことを示している”。

この研究で、経皮的セメント注入を受けた患者は保存療法群の患者よりも、さらなる脊椎骨折の発生率が非常に高かったことが明らかになった。新たな骨折の約3分の1は、隣接する椎間に発生した。

2群はべースライン特性に関して同等ではなかったため、これらの差は2群の患者における骨粗髭症性骨折の自然経過の違いを反映する可能性があった。しかし、経皮的セメント注入によって生じたストレスの直接の結果である可能性や、またはこれらの因子が組み合わさって生じた可能性も考えられた。

無作為研究の利点の1つは、同様のべースライン特性を有した2つの群を対象として開始することである。それによって、各治療法の相対的利点に関する、より確実な結論を導くことが可能になるだろう。

椎体形成術に関する偽らざる真実

Christopher M.Bono博士によるSpineの論説では、この研究の標題を“椎体形成術に関する偽らざる真実”に変更したらどうかと示唆している(Bono,2006を参照)。脊椎治療技術に関する多くの研究および試験の報告の著者らは、ある技術または別の技術に対する過度の期待を隠せない。一方、この研究の著者らが2つの治療法に関して何らの意図も抱いている様子がない点から、この研究は歓迎すべき安心材料となる。

“著者らは、ある製品/術式、または別の製品/術式をインフォマーシャル(情報提供の形での広告)を利用して販売するという意識をもたずに、適切な科学的方法を用いて経皮的椎体形成術の利点と欠点の両方を実証した”と、Bono博士は言及した。

そしてスペインの研究グループが期待しているように、この研究がこの分野におけるRCTの
実行および完了へとつながることが望まれる。

現在、米国において椎体形成術と保存療法を比較するRCTが進行中であるが、患者登録が灘航していると伝えられている。

参考文献:

Alvarez L et al., Percutaneous vertebroplasty: Functional improvement in patients with osteoporotic compression fractures, Spine, 2006; 31:1113-8.

 Bono CM, Point of view: The honest truth about vertebroplasty, Spine, 2006; 31:1119. 

The BackLetter 21 (6):61,70, 2006.

加茂整形外科医院