自動牽引から除圧治療まで、牽引に関するエビデンスは不十分

The Evidence on Traction ーFrom Auto-Traction to Decompression TherapyーFalls Short 


毎日何千人もの患者が、単純な自動牽引から、いわゆる機械的脊椎除圧治療まで、様々な形の腰椎牽引を受けている。牽引には人を引き付ける不思議な力があり、治療法の競争が激しい市場の中で注目すべき力を保っている。

しかし、牽引および脊椎除圧治療により得られると推定される利益に関して、市場には混乱もみられる。BackLetter編集部には日頃、様々な形の牽引の価値についての質問が寄せられている。

最近のコクラン共同研究の体系的レビューによると、いずれの形の牽引についても単独治療として推奨するのに十分な、無作為比較研究に基づくエビデンスは存在しない。

Judy Clarke博士らは次のように述べている。“腰痛患者の場合、現在得られているエビデンス(強力なエビデンスと位置づけられている)は、単独治療としての牽引の有効性はプラセボ、模擬治療、無治療、または他の治療と同程度でしかない、というものである。坐骨神経痛患者の場合エビデンスに一貫性がない”(Clarke et al.,2006を参照)。

有効性の有無が証明されていない治療と、その有効性が誤りであると証明された治療は、もちろん同じではない。牽引に関する質の高い研究が不足しているため、“牽引が、一般的な感触として腰痛患者に有効な治療法ではない、という否定的な結論を文献から引き出すことは、まずできない”、とClarke博士らは述べている。

したがって、いずれの牽引方法についても、それが腰痛や坐骨神経痛の有効な治療法か否かを明らかにするためには、質の高い科学的研究が必要である。Clarke博士らが指摘しているように、“腰痛患者への牽引の適用に関する今後の研究は、症状のパターンと持続期間とを区別して実施すべきであるとともに、バイアスが介入するのを避けるために最も優れた方法論の基準に従って実施すべきである”。

参考文献:

Clarke J et al., Traction for low back pain with or without sciatica: An updated systematic review within the framework of the Cochrane Collaboration, Spine, 2006; 31:1591-9. 

The BackLetter 21(9): 99, 2006. 


(加茂)

自動牽引はゆるやかなストレッチの役割を果たすと思うので、罹患筋によっては効果が期待できると思う。

腰痛、坐骨神経痛の痛みの本態は筋痛症だということをまず理解すべきだろう。

加茂整形外科医院