司誠会野上病院(鹿児島県)心療内科の長井信篤氏は,心身症診断・治療ガイドラインにより診断した慢性疼痛(心身症)に対する心身医学的外来治療の無効例について検討。「他科での治療で効果がなく、さらに心身医学的外来治療も無効な場合は、入院治療に切り替えたり、繰り返し他科との連携を図ることが大切である」と述べた。
治療無効例ではうつの合併頻度が高い
長井氏らは、2002年1月〜03年12月の 2
年間に鹿児島大学病院心身医療科で心身症診断・治療ガイドラインに基づき慢性疼痛(心身症)と診断され、外来で
4か月以上心身医学的治療(薬物療法、カウンセリング、自律訓練法を併用)を受けた35例のうち、診療録に痛みのvisual
analogue scale(VAS)評価、社会的適応の評価が記載されていた28例を対象に、年齢、性、器質的疾患の診断名、治療期間、心理検査(Cornell
Medical Index;CMI)、うつの合併、治療前後の痛みのVASおよびVAS改善率を後ろ向きに調査した。
その結果、慢性疼痛の原因疾患としては,整形外科疾患13例、口腔疾患
5 例、慢性頭痛 3 例、神経因性疼痛 3 例、その他 4
例であった。
痛みのVAS改善率30%未満かつ社会的適応が改善しなかった群(無効群、8
例)と、痛みのVAS改善率50%以上かつ社会的適応が中等度以上改善した群(著効群、7
例)の比較では、無効群は著効群に比べてCMIの抑うつの得点に有意差が認められ、怒りおよび合計(M-R)の得点も高い傾向が認められた。これらの点から、年齢、器質的疾患の有無、CMIの精神的自覚症の抑うつ、怒りや合計(M-R)の得点などを考慮し、治療経過を見ていくことの必要性を訴えた。また、無効群に対する入院治療への切り替え時期、病態仮説や治療の目的・方法は、症例ごとに詳細な検討を行う必要があると報告した。
最後に同氏は、慢性疼痛にはオピオイドや漢方薬、非定型抗精神病薬などが有効な症例もあり、また症例に応じてペインクリニック的アプローチや理学療法、リハビリテーションを組み合わせた多面的段階的治療が重要であると指摘した。