ー絞扼性神経障害ー

濱 弘道(京都大学医療技術短期大学部理学療法学科)

ペインクリニックVol.20(1999.4)別冊


概念

末梢神経が解剖学的に密接する隣接組織によって慢性の機械的刺激を受け,その部位すなわち絞扼点(entrapment point)において局所性の損傷あるいは炎症を起こすことに基づく障害である。それらの絞扼点は一般に解剖学的に狭隘な特定部位(図1)であり,反復する運動あるいは作業がその局所的な慢性の機械的刺激の要因になりうる。さらに妊娠,double crush syndromeや糖尿病などはこの障害を発生させ易い身体的条件であり基礎疾患である。

病態

慢性の機械的刺激によってもたらされる神経幹とくに神経束内および外の線維化がみられる。すなわち機械的刺激とくに摩擦によって神経上膜・周膜の線維化が起こるとともに神経束内・外の血流循環障害が生じる。とくに静脈還流不全により神経・血管関門の破綻をきたし神経束内浮腫が発生する。このため神経束内圧が上昇し,一層血液循環が悪化し,これによって生じる酸素欠乏状態が神経束内・外の線維化を進行させると同時に,順行性高速軸索内輸送を妨げ,神経障害を起こすものと考えられる.。なかでも神経・血管関門の破綻は神経束内外の線維化のもとをなすものであり,したがって神経束内外の組織液を遮断するdiffusion barrierとして,最内層の内皮様細胞の毛細血管内皮細胞との強固な結合を必要とする神経周膜が,その周膜下腔において拡大と線維化をきたすことは神経束内血管の線維化とともにこの障害に特有な所見である。そのほか大径有髄神経線維数の減少,神経束内圧上昇による髄鞘変形は神経活動電位の低下,神経伝導遠度遅延などの電気生理学的異常所見と関連している。

臨床症状

診断 

4)電気生理学的検査:絞扼性神経障害の確定診断には神経原性波形などの証明が不可欠である。


(加茂)

絞扼性神経障害(図1)

Troracic outlet syndrome(胸郭出口症候群)

Supurascapular neuropathy(上肩胛神経麻痺)

Quadrilateral space syndrome

Cubital tunnel syndrome(肘部管症候群)

Posterior interosseous nerve syndrome

Pronator syndrome

Anterior interosseous nerve syndrome

Ulnar tunnel syndrome

Carpal tunnel syndrome(手根管症候群)

Meralgia paraesthetica(知覚異常性大腿神経神経痛)

Piriformis syndrome(梨状筋症候群)

Fibural tunnel syndrome

Tarsal tunnel syndrome(足根管症候群)

Morton'disease(モルトン病)

 

  • 赤字は絞扼性神経障害だと思う。青字は違うと思う。黒字は知らない。

  • 概念

    末梢神経が解剖学的に密接する隣接組織によって慢性の機械的刺激を受け,その部位すなわち絞扼点(entrapment point)において局所性の損傷あるいは炎症を起こすことに基づく障害である。それらの絞扼点は一般に解剖学的に狭隘な特定部位(図1)であり,反復する運動あるいは作業がその局所的な慢性の機械的刺激の要因になりうる。

これからすれば当然ヘルニアは該当すると思うのだがなぜかヘルニアを絞扼性神経障害に含めている文献はほとんどない。なぜなのだろうか。

加茂整形外科医院