高齢者のうつ病を強カに治療することによって疼痛が緩和されQOLが向上

Jennifer Warner

WebMD Medical News  2003.11


高齢者における抗うつ療法の改善は、人生観を上向きにするだけではなく、関節炎による疼痛や運動障害も軽減する可能性がある。

高齢者にとって、うつ病と関節炎は双方ともごく普通にみられる運動機能障害をもたらす疾患であるが、新しい研究によって、抗うつ療法の改善が、うつ病に有効であるばかりか、関節炎による疼痛や苦痛をも軽減させうることが示された。研究者らによると、高齢者のうつ病に対して適切な治療を行うと、関節炎が生活に及ぼす負の影響が軽減されることが確認されたという。

「気分が改善するのに加えて、疼痛による日常活動における障害も軽滅した、とGroup Health Cooperative健康研究センター(ワシントン州シアトル)の研究者であるEli.zabeth』in,MD,MPHは述べている。「さらに我々が確認したところでは、患者は全般的なQOL(生活の質)が改善したと答えた」。

Lin博士は本研究の結果を、ニューヨークで開催された疼痛管理に関する米国医学会の説明会で報告した。また、本研究は『Journal of the American Medical Association』11月12日号に掲載予定である。

一方を治療すると他方も改善

研究者によると、高齢者の約6人に1人がうつ病を患っており、65歳を超えるの高齢者のほぼ3分の1は関節炎に苦しんでいるため、関節炎は高齢者における障害の主要因の一つになっている
という。

本研究では、米国中のプライマリケア診療所18カ所でうつ病と関節炎両方の治療を受けている60歳を超える成人1,001例を対象に、抗うつ療法の強化が、疼痛や他の日常生活の側面を改善するかどうかについて研究者らにより検討が行われた。

試験開始時、被験者の半数未満が抗うつ薬を服用しており、57%が鎮痛剤を服用していた。

被験者は、試験期間中、抗うつ薬などの通常治療群か、抗うつ薬投与と問題解決のための心理療法(6回から8回)の両方またはいずれか一方により抗うつ療法の改善を目指した介入群に無作為に割り付けられた。

12ヵ月後、介入群の患者は、うつ病指数が改善しただけではなく、疼痛強度の平均指数も低下し、関節炎または全般的な疼痛による日常活動の障害が軽減したことを研究者は見出した。さら
に、うつ病強化療法を受けた患者の全般的な健康状態とQOLは、抗うつ薬による標準的治療を受けた患者と比較してより良好であった。

介入群の患者の約80%が抗うつ薬を服用し、約3分の1が心理療法を受けた、と研究者らは述べている。介入の推定費用は患者あたり約$550であった。

しかし、同博士によると、うつ病の高齢者は、うつ病のない高齢者よりも5割増しの医療サービスを受けることが従前の研究から示されているため、うつ病の適切な治療は、長期的には費用の節約になるという。今後の研究では他のプライマリケア医の診療所でこの治療法を実施する場合の費用対効果について検討が行われるだろう、と同榑士は述べた。

参考文献

Lin, E. The Journal of the American Medical Association,Nov.12.2003;vol 290=pp2428-2434.ElizabethLin,MD,MPH,Center for Health Studies, Group Health Cooperative, Seattle,Wash.


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