固定術と保存療法との比較の再考

Fusion vs. Nonoperative Care Revisited 


椎間板変性に起因する慢性腰痛の治療法として、固定術と保存療法のどちらがより有効なのか?

無作為比較研究(RCT)の新規の体系的レビューは、 この質問に一言で答えるのは不可能であることを示唆している。

しかしSohailK.Mirza博士とRichard A. Deyo博士によると、固定術と保存療法のアウトカムの差は小さく、臨床的に意味のあるレベル以下のようである。「腰痛に関連する活動障害の平均的なアウトカムに関して、治療間の臨床的に意味のある差としてFDAが定めた閾値よりも大きな差を観察した研究はない」と博士らは述べている(Mirza and Deyo,2007 を参照)。

Mirza博士とDeyo博士は選択基準を満たした4件のRCTを同定した:1件はスウェーデン、2件はノルウェー、および1件は英国の研究であつた(Fritzell et at.,2001;Brox et al.[a], 2003;Brox et al.[b],2003;Fairbank et al.,2005 を参照)。それらについてはすべて過去のBackLetterで詳細に紹介されている。

Mirza博士とDeyo博士によると「我々の考えでは、これら4研究は椎間板に起因する腰痛に対する固定術の有効性に関して利用可能な最良のデータである」という。 しかし博士らは、「それらすべての研究に方法論上のいくつかの欠陥および/または実施する上での奇妙な点があり、全体的には明瞭な結論を立証する研究はない」と述べている。

Mirza博士とDeyo博士はいくつかの有用なキーポイントを示している。Fritzell博士らの研究で実証されたように、固定術は旧式の体系化されていない保存療法プログラムよりも有効であるように思われる。言い換えれば、固定術は米国で行われている多くの保存療法プログラムよりも有効だと考えられる。

これに対して、Brox博士らによる2件のRCTおよびFairbank博士らによるRCTで明らかになったように、固定術は認知行動療法を取り入れた体系化されたリハビリテーションプログラムよりは有効性が低いと考えられる。

もし後者の結論が正しければ、米国の大部分の脊椎専門クリニックとへルスケアシステムは固定術の代替としての最適な保存療法プログラムを提供していないことになる。米国には漸進的な身体トレーニングと認知行動療法を組み合わせたリハビリテーションプログラムを行っているクリニックがあるが、それらはごくまれである。

このレビューで検討されたRCTに基づいて、全米の患者が固定術を行う前に、または固定術に代わる治療として、そのようなプログラムを要求するのは正当であると思われる。 

参考文献:

Brox JI et at. (a), Randomized clinical trial of lumbar instrumented fusion and cognitive intervention and exercises for the postlaminectomy syndrome , Annals of the Rheumatic Diseases, 2003, 62(suppl):229.

Brox JI et al. (b), Randomized clinical trial of lumbar instrumented fusion and cognitive intervention and exercises in patients with chronic low back pain and disc degeneration, Spine, 2003 ; 28:1913-21 .

Fairbank J et at. , Randomized controlled trial to compare surgical stabilisation of the lumbar spine with an intensive rehabilitation programme for patients with chronic low back pain:The MRC Spine Stabilisation Trial, BMJ, 2005 ; 330: 1233-9.

Fritzell P et al. , Volvo award winner in clinical studies : Lumbar fusion versus nonsurgical treatment for chronic low back pain: A multicenter randomized controlled trial from the Swedish lumbar spine study group, Spine, 2001 ; 26: 2521-32.

Mirza SK and Deyo RA, Systematic review of randomized trials comparing lumbar fusion surgery to nonoperative care for treatment of chronic back pain, Spine,2007 ; 32:816-23 .

The BackLetter 22(6): 62, 2007. 


(加茂)

そもそも椎間板性腰痛とはなんぞや。診断はどうしてするのか。整形外科医の間違った思い込みではなかろうか。

人工椎間板の研究に対する新規の体系的レビューの手厳しい批判

椎間板に起因する疼痛”を診断カテゴリーとすることの妥当性について疑問を呈した。

加茂整形外科医院