第4章 別れそして・・・
あと5年早く出会っていたら・・・。 電話で話すたび、彼はそう言った。彼は5年前に結婚していたのだ。 しかし5年早かったら、ともこはまだ19歳。そのとき、彼に出会っていてもきっと彼のことは 選ばなかったかも。 その時のともこは、そんなことは考える余裕もなく、本当に5年前に出会いたかった、 そう思っていた。 ともこは、いつも「私、適当に誰かと結婚するから、そしたらその後もまた付き合ってくれるよね? ユウだけ結婚してるの不公平だし、私、適当に誰かと結婚するよ。そしたら、ずーーっと 付き合っていられるよね?」などと、アホなことを言っていたのだ。 今まで結婚なんて考えたこともなかったが、彼とはずっと一緒にいたいと思った。 出来ることなら、奥さんから奪い取りたかった。しかし、それは叶わぬ夢・・。 そして、本当に叶わなかった(┰_┰)しゅん・・ ともこは一度も「奥さんと別れて」という言葉を口にしたことはない。 それを言ってしまえば彼を苦しめることになるのだ。ともこは彼のことを苦しめたくない一心で 自分の気持ちを必死で抑えていた。
指輪をもらってから2週間・・ しかし、彼と会う約束はなかった。 しばらくして、ともこも彼に会えない寂しさからか別の男と付き合い始めていた。 しかし、夜には彼からの電話を待っている。出かけているときも、留守番電話のチェックは 欠かさなかった。 そんなある日、ともこは会社の研修で東京へ行くことが決まり、さっそく彼に電話をした。 彼も何とか都合をつけ、久しぶりに会うことに・・。 ともこは、研修なんてどーでも良かった。3日間の研修・・これが終わると彼に会える・・。 研修が終わり彼との待ち合わせの場所へ・・。ある駅の構内、改札を過ぎると彼が待っていた。 久しぶりの彼、やっぱり彼・・思いっきり抱きつきたかったが、人目があるのでそれはやめておいた。 ともこが乗る電車の時間まで、ほんのわずかな時間しかない。 2人は今までの分、これからの分をまとめて・・・ムフフッ(//o//)ゞ なんで、時間ってこんなに早くたってしまうんだろ・・・彼に会うたび思うことは同じだった。 電車の時間が近づく・・。スッキリした顔で(?)2人で駅までイチャイチャしながら歩いた。 「ねぇ、また会えるよね」 「もちろん、会いに行くよ」 これが最後になるなんて、その時の2人は思ってもみなかった。
電車の中でも、一人ニヤケていたともこ。午前0時近く富山駅に到着し、その顔が一瞬引きつった。 付き合っている男が迎えに来ていたのだ。付き合ってると言っても、その男がくっついてきた ので付き合っていただけのようなものだが・・。 ともこは、その男には帰る時間も、電車で帰るのか飛行機で帰るのかも言っていなかったの に・・なぜ?? 飛行機は午後7時頃までしかなく、それまでは空港で待ち、その後はずーっと駅で待っていたらしい。 ちょっとキモかった。 彼がそこまでしてくれたのなら、ともこはうれしくて気絶していただろう。 前々からともこはその男とは別れたかったのだが、今日彼に会って別れることを決意した。 ともこは、彼のことも今までのことも全部話し、別れて欲しいと男に言った。 しかし、その男は、それでもいいから別れないでくれとともこに頼んだ。 だが、ともこの意志は変わらなかった。 彼を選んだところで、彼がともこのものになるわけでもなかったのだが・・。
しばらくして、彼は仕事で東京へ行き、連絡も次第に少なくなって、電話も月に一度ほどになった。 ともこも彼のいない生活に慣れ始め、違う男となんとなく恋愛し結婚することにした。 結婚が決まったことを彼に告げたのだ。 最初は喜んでくれていた彼・・。しかし、彼は ともこの結婚式の一ヶ月前にこんな電話をしてきた。 「とも・・オレやっぱりともこが一番いい。こっちでいろいろ女と遊んだけど、やっぱりともこのこと 忘れられない。もうダメだ・・最近、クスリにばかり頼ってる」 このとき、彼はハイになれるクスリをちょくちょく飲んでいたらしい。 何で今さらそんなこと・・・。 もう少し前に言ってくれてたら・・・。
その電話が彼との最後の電話になった。 複雑な気持ちでともこは別の男と結婚した。
彼と過ごした約1年、たった1年だったけど、ともこにとっては最高に輝いていた・・そして 最高に悲しくて、最高に幸せな1年だった。 その彼のことは今でもずーっとともこの心の中にしまってある。 ともこは、彼の声、話し方、クセ、彼のニオイ、彼の字、クールな顔、笑った顔、バカ丸出しの顔 いろんなことの一つ一つを今でもハッキリと覚えている。 忘れることが出来ないのだ。
アイシテルって言った唯一の人だから・・。
「愛してる」と心から言えた人だから・・。
心の底から本当に愛した人だから・・。 おしまい。・・・かな?
ともこは、結婚して3年ほどたった頃からメールを始めた。 きっかけは、その彼に連絡を取りたかったのだ。 ある、大きなプロバイダーなら絶対彼も入ってるはず と、勝手に決めつけ入会。そして、会員検索をしてみた。 会員にその名前があったのだ・・住居・・長岡市 まさか、ホントに・・??? ドキドキしながらメールを出してみた。 しかし、返事はない。 メールを開いた様子もなく未開封のまま。 彼とは連絡を取るなって神様が言っていたのだろう(*^τ^*) おかげで、彼とは別の、心から信頼できる人に巡り会えたのだ。 まだ会ったことはないのだが、会えたらきっとこの言葉を言うと思う。 「アイシテル」。
ホントに、おしまい・・よ。