第3章 プレゼント

花火の日から、約2週間。今度は彼が富山に遊びに来ることになった。
待ちに待ったその日・・・。
昼間はデートし、夜は彼の泊まるホテルで一緒に・・・と行きたいところだったが
また母親に何か言われるとマズイと思ったともこは、自宅に帰って一人で寝た。
翌日、朝早く彼を迎えに行き、デート2日目。
どうして時間ってこんなに早くたってしまうんだろ・・・ともこはそう思った。仕事の時は
いつも、何でこんなに時間たつのが遅いのかしら・・・と、思っていたのに・・。
ともこと彼は、2週間に一度お互いの距離を縮め、縮めるだけではなく距離をなくした・・(//o//)
彼と会った翌日はいつも目が泣きはらしてパンパンに腫れていた。
そのたびに、「またフラレたんですか」・・その言葉を耳にするのだった。

ともこの働いていた現場も終わりに近づき、ともこはそのゼネコンの子会社に就職した。
実家からは少し離れていたので、富山市内に独りで住むことにした。
親元を離れたともこは、毎日毎日楽しい日々を過ごしていたが、やっぱり彼に会えない
寂しさには勝つことができなかった。その寂しさをいやすために、遊び歩いていたよう
なものだった。

彼は、ともこに会いに来るたびにプレゼントを持ってきていた。ともこの方は彼に
プレゼントなどしたこと無かったのだが・・。
最初は、グッチの腕時計(ともこが現在グッチ好きなのはこのことが大きな理由である)。
次はダイヤのピアス。その次がラルフのセカンドバッグ。
そして、ルビーの指輪。

このルビーの指輪は、ともこの生涯で一番印象的な渡され方をしたのだった。

その日、彼が富山に来た。
まずはチェックインするためホテルに向かった。ともこも、市内にはそんなに詳しく
なかったので彼の車の助手席に座り、窓から外を見ながら駐車場を探した。
「ん〜、ここかなぁ」ともこは窓から顔を出し立体駐車場を見上げた。
そのときだった。
スーッ・・・
右手の人差し指に何かの感触。見ると、ルビーの指輪がはめられていた。
「え・・・ユウ・・」
「そんなに高いものじゃないけど・・」
「ありがと・・・でもサイズが・・」
確かに、ともこの指は異常に細かったので人差し指、いや親指でもユルユル
だったのだ。
ともこはそれでもうれしくてユルユルの指輪をはめたまま彼とのデートを楽しんだ。

その日の夜は友達(しずこと同僚)も一緒に街に出て楽しんだ。
彼には奥さんがいるなんてことはこれっぽっちも感じさせないほど、ともことは
お似合いのカップルだとみんな言った。
しかし、現実に彼には奥さんがいるのだ・・どんなにお似合いでも2人で同じ場所へ
帰ることはない。しかし、今日だけは、同じ空気を吸って、同じものを見て過ごせる。
ともこはそのとき世界一幸せだと感じていた。
ある飲み屋に入ったとき、彼はカラオケで米米クラブの「愛してる」を歌った。
私のために・・・ともこはそう信じていた。
友達も帰り、彼とともこは手をつなぎながら泊まるホテルまで歩いた。

ホテルに着き、なぜか彼はビデオを持ってきていた。
アダルトビデオ・・・ではなく、ホラービデオだった。なぜ?それは未だに不明・・
ビデオを見て背筋がサブくなったところで、熱い夜を迎えた・・(//o//)ゞ
それが目的だったのか・・ハテ?

翌朝チェックアウトを済ませ、彼の車をインター近くのガソリンスタンドへ置かせて
もらい、ともこの車でドライブデート。天気は良く、ともこは海へ向かった。海岸の
砂浜を走れる場所へ来たともこ。適当な場所に車を止め車を降り、2人で砂浜へ出た。
周りにもたくさんのカップルや家族連れ。ともこと彼も、どこからみても普通の恋人同士
という感じだったろう。まさか不倫カップルだとは誰も思うまい・・。
以前の不倫とはまったく違う・・以前は夜にしか会えなくて会話もあまりなく(なぜ付き
合ったんだ)まるっきりどこから見ても不倫カップルに見えただろう。
以前のことはどーでもよい・・。
しかし、彼には帰らなくてはならない家があった。
日も暮れ、彼の車を止めたガソリンスタンドに着いた頃には星が出ていた。
「ちょっとこっち来て」彼が自分の車にともこを呼んだ。
「ともちゃんに、聞いて欲しい歌があるんだ」と言い、彼はカセットテープをつけた。
そこから流れてきたのはT−BOLANの『離したくはない』だった。
スタンドにも人気はなく、通る車もほとんどなかった。
その曲を聴いた後、2人は、車の外に出てしばらくずーっと抱き合っていた。
彼は「一度これやってみたかったんだ」と言って、ともこの背中をスタンドの壁につけ
両手をともこの顔を挟むように壁に付いた。そしてゆっくり顔をともこに近づけ、唇が
触れ合った。
ともこの指には彼からもらったユルユルの指輪。
ともこは落ちていないか、いつも指で確認していた。
彼は車に乗りインターへ向かう。ともこは自分のアパートへ・・、しかしもう、ともこは
泣かなかった。
また2週間後に会えるんだ・・・。

   
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