小松市尾小屋町

新聞で見るスキー場が出来るまで

昭和40月2日の北国新聞
  尾小屋開発で仮調印
    箱根観光と小松市で憩いの場
 
小松市尾小屋地区一帯を大観光地にしようと地元と箱根観光開発会社(東京都中央区宝町二丁目、吉村一郎社長)間で交渉が続けられていたが、1日両者間で覚書を交換し、仮調印した。同地区はさる37年秋、80年の歴史を持つ日鉱尾小屋鉱山の閉鎖と共に廃れていくばかり、田畑もなく生活の糧を失った同地区の人たちは新しい生活を求めて山を降りて行く人たちが多く、一時は鉱山社宅400戸と地元民家300戸があったが、今では240戸にまで減り、木炭やメリヤス業に細々と生活してきた。市当局は同地区の発展に力を入れているが財政難で手の施しようもない状態にあった。こうしたおり箱根観光開発会社が同地区の自然環境に発展性があるとみて吉村社長が昨年12月同地区の大倉岳一帯を視察、観光地に適しているとして地元に協力を求めてきた。地元も今後の産業の発展性もないことから、積極的に協力を申し出、1日、萩原市助役のほか地元から小林町内会長、深田大倉岳開発観光協会長、川上尾小屋農林組合長が出席、市長応接室で吉村社長と覚書を交換した。
 大倉岳の土地を提供
  覚書の内容は@ 箱根観光開発会社の資本導入による大倉岳一帯の土地は提供する A 温泉の開発およびその利用については箱根観光開発会社に権利を譲る B 観光開発を進めるため相互代表からなる委員会を設置する。具体的計画は両者間で今後検討されるが、大衆の健全娯楽センターを目的に高さ650メートルの大倉岳にスキー場を設置すると共に現在ボーリング中の温泉を利用して憩いの場をつくる、これに伴い尾小屋鉄道の整備、県道拡幅舗装を推進して行こうというもの。市当局もこの計画に賛成の意を表しており、藤井市長は「廃れ行く尾小屋地区の今後の発展に結びつくものと大きな期待を寄せている」と言っている。
 小林町内会長の話
 年々さびれ行く尾小屋を再建しようと計画をねっていたが、今後は自然環境を利用して観光地作りを目指したい。
 吉村社長の話
 地元の協力を得て立派な大衆健全娯楽センターをつくる。

昭和40年 月の北国新聞
  
尾小屋鉱跡にスキー場
     箱根観光開発社長が来県
 小松市尾小屋町でスキー場建設を計画している箱根観光開発社長の吉村一郎氏は6日朝萩原小松市助役、岡上同商工観光課長、川上尾小屋メリヤス工業協同組合理事長らと県庁をたずね、同観光課で「今年のスキーシーズンまでにリフトを完成させるのでよろしく」と今後の協力を要望した。 吉村社長の話では、同社は旧尾小屋鉱山跡の山岳地を利用してスキー場をつくることにし、40年度は工費一億三千万円で千メートルの長さのリフトをつくる。これは大倉山の約80ヘクタールにつくる長さ千五百メートルのゲレンデの中央。

昭和40年 月の北国新聞
  
大スキー場の建設進む
     
大日ダム結びレクリ施設も計画

 昭和小松市尾小屋地内の丘陵地帯に北陸随一といわれる本格的なスキー場工事が来年1月の完成を目指して急ピッチで進められている。このスキー場建設工事は尾小屋鉱山の閉山と共に寂れている尾小屋地区一帯を一大観光地として再現しようと、箱根観光開発会社(本社東京、吉村一郎社長)が中心となって観光開発に今年4月から五カ年計画で乗り出しているもので、初年度の今年は温泉試掘とスキー場建設が総事業費六千万円で進められている。
 温泉試掘は同町を流れる郷谷川沿いに新温泉を発見、現在百三十メートルまで掘り下げられ、三百メートルまでボーリングする予定で温泉湧出と同時に国民宿舎建設が予定されている。スキー場建設は今冬からの使用可能を目標に丘陵地帯にリフト(八百五十一メートル)建設のほかスロープ整備が順調に進んでいる。スロープは千二百メートルで初心者からベテランまで好きなコースをとることができるよう考慮されており、三十メートルのジャンプ台も取りつけられる予定で全日本スキー連盟教育副部長の大熊勝郎氏も北陸一のスキー場と太鼓判を押している。リフト起点には六百六十平方メートルの休憩場兼食堂、リフト頂上には五十台の車を収容できる駐車場なども設けられ、1月中旬に完成の予定。来年以降は大倉岳に新しいスキー場のほかスケート場、ハイキングコース、ドライブコース、空中ケーブル、遊園地、大日ダムを利用して遊覧船を浮かべるなど大衆レクリエーションセンターが誕生する。総事業費は約20億円。

昭和401011日の北国新聞
  大倉岳高原”に決まる
     
尾小屋、大倉岳一帯の観光地名称
 小松商工観光課は、箱根観光開発会社の手でスキー場建設などの工事を進めている小松市尾小屋地区、大倉岳一帯の観光地名称を募集していたが、9日審査会を開き応募作品五百十三点を審査の結果“大倉岳高原”と決めた。この名称を応募した人は6人あり、賞金の五万円は6人にわけられた。入選者は次のみなさん。
 山上孝司(小松市八日市町)田野そと、川上なみ、山岸吉長、山本昭一、阿字地逸子(以上尾小屋町)


昭和401126日の北国新聞
  
観光の町へ衣がえ
    尾小屋 スキー場できる

 小松市のテコ入れで箱根観光会社が二十億円の資本を入れ、今秋から着工した尾小屋町の大倉岳高原スキー場工事は着々と進み、町民たちは近づくシーズンを前に、このほど大倉岳高原民宿組合を結成、自宅の改造を行って鉱山の町から観光の町へと生まれ変わるふるさとに大きな期待を寄せている。
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 同町は鉱山閉鎖まで四百戸以上もあったが、いまでは二百戸足らずに半減、病院などの医療施設も閉鎖と共に姿を消し、いっぺんに静かな山奥の町となった。しかし今は町全体がスキー場成功への願いに固まり、スキー客収容施設造りのため、家々には大工さんのツチ音が響いている。来年1月10日のオープンを目指すスキー場建設工事も、このほど千四百メートルのゲレンデができあがり八百五十一メートルのリフトもロープを付けるだけになった。箱根観光会社の話によると、1月11日にはスキー場オープンを記念して西郷輝彦や水前寺清子などの歌手を迎え、華やかなパレードを予定している。この日は一万人近いスキーヤーが同スキー場を訪れ、また4月までのシーズン中の土、日曜は中京、関西方面から二千から三千人のスキー客が訪れるものとみ、同社では地元に対して民宿協力を要望している。さる10日、町の世話役赤木吉松氏を組合長として結成された大倉岳民宿組合には、同町197戸のうち64戸が加入、さっそく大工をかりたて、家庭的ムードを壊さないだけに家のしきりや簡易ベッドを取り付けたり、洗面所などの改良を行っている。一戸当たりの収容人員は平均5人で合計500人が常時宿泊できることになる。同組合で申し合わせた宿泊費は、一泊二食付きで六百から八百円と他スキー場と同額。長期利用者には割安制度もある。

 またスキーヤー輸送のため尾小屋鉄道では、さる38年7月廃止した北浅井―尾小屋間15.5キロの路線申請を25日、運輸省に提出した。もし許可がおりれば地元では冬季の除雪を町中で行い、バスが運休しないよう配慮している。

        

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