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医学界全体の腰痛に対する広範な意識改革が必要である。(FILE248

腰痛に屈するな  オーストラリアで行われた独創的なマルチメディアキャンペーンは、腰痛に対する一般社会と医学界の態度を転換できることを示している。ビクトリア州における広報キャンペーンは、腰痛についての単刀直入な明確なメッセージを伝え、驚くほどの効果を上げた。(FILE170

腰痛に対する態度の根本的な改革がなされるまでには、長い過程を要することとなるだろう。(FILE98  

病態生理に関する事実無根の概念を患者に押しつけ、治療に携わる医師の私的見解を患者に披露する複雑な治療行為の1要素である。患者はこれらの診断によって永遠に変えられるが、良いほうに変えられることはあまりにも少ないと博士は主張した。FILE166

脊柱管狭窄のために除圧手術を受けた患者を7〜10年後に追跡調査したところ、1/4の患者が再手術を受け、1/3が重度の腰痛を訴え、半数以上が2ブロック程度の距離も歩けないことが明らかになったFILE121

臥床安静の推奨の減少、可能な限りの画像検査の削減, 医療関係者に変化するよう説得FILE89

誤った思いこみの修正という方法を組み合わせることで、腰痛はうまく治療できるという確信が高まりつつある。この種のコンセンサスは5年前には存在しておらず、これは、研究および医療方針の進歩への大きな一歩を反映したものであり、それは同時に、科学的証拠が蓄積されつつあることをも反映している。(FILE89

いまだに腰痛の解剖学的発生部位を探している研究者もいますが、そのような研究はおそらく役に立たないだろうという意見が大半です。FILE89

過去百年間の腰痛にまつわる話題のほとんどは、実のところ整形外科的な理解および治療の話です。解剖的損傷を探すこと、そしてそれを治す方法を見つけようとしてきました。これは、非常に機械的な(mechanical)治療方法であり、多くの問題点を無視しています。そして実際のところ、この方法は効果がありませんでした。・・・かつての生物医学的腰痛モデルがプライマリーケアの段階において失敗であったことが、概ね判明している(FILE89

医師による忠告が、腰痛、その病因、治療および予後について非現実的で有害な考えを助長していることがしばしばある・・(FILE185

正常な脊髄後根を牽引しても痛くないFILE134

過去50年間の主な腰痛予防戦略は完全な失敗だという。(FILE141

専門外科医への早期紹介を減らすことを推奨した。・・・非生産的な診療方法をやめるよう、医師を説得する一番良い方法は何だろうか。(FILE210

腰痛の考え方を変えて、その影響を軽減(FILE204       FILE205

医師らは時代遅れの考え方に固執している?  伝統的な医学的仮説は完全に一蹴された。FILE147

欠陥のある時代遅れの損傷べースのモデルの 代わりに なる、腰痛および腰痛管理の状況に応じた、生物心理社会的モデルの作 成において重要な役割を果たした。(FILE218

この種の病態に対する適正な手術の適応について、ますます謎が深まった。(FILE139)

皆さんは患者の態度や意識変革によって活動障害を回復させることができますが、それは皆さん自身が可能であるという信念と態度を持ったときにだけ叶うものです(FILE235

「60年間,我々は“腰部損傷”という概念とともに生きてきました。それはあまりにも欠陥が多く,もはや正当化することはできません。その上,医原性なのです。我々にこれ以上の研究は必要なく,この概念はもはや有用性を失っています」。(FILE276

職場における身体的因子が腰痛および他の一般的な筋・骨格系障害の最も有力な原因であるという、すでに時代遅れになった科学的仮説を蘇らせようとしている。しかし、今や、この時代遅れの仮説を捨てて、明らかとなった科学的データと合致する新しい解釈へと移行する時であろう。(FILE287

20 世紀のほとんどの期間にわたり、医療の主流にいた医師らは、腰痛患者に、疼痛を引き起こした活動を中止し、疼痛 が消失するまで休息するようアドバイ スした。このストラテジーは、有効性が 一度も証明されたことがなく、今日の西洋社会における腰痛による活動障害の 重大危機を引き起こす原因となった。(FILE287

それは腰痛教室で誤ったメッセージを患者に伝えたためなのだろうか?”とノルウェーの研究者は疑問を投げかけている。過去の多くの腰痛教室は、腰痛の伝統的な捉え方にどっぷり浸かっていた。FILE304

腰痛に関するもう一つの伝統的な仮説も、ここで絡んでくるだろう。時代遅れになった、成人の腰痛の“損傷モデル”の中心的見解の一つに、腰痛は職場等における身体的負荷および身体的暴露が主な原因であるというものがあった。FILE336

この研究は脊椎治療に関する中心的仮定(訳者注:誰もが疑がっていない合意事項)に異議を申し立て、専門医が治療方法を大きく変えるよう勧めている。FILE281

我々の腰痛に対する認識が今、根本的な修正を迫られている。その背景にあるのは、高齢社会の到来、医療費の高騰、「不適切な医療」の存在、患者意識の向上、そして支払い側の危機感である。(FILE371

頸椎固定術が椎間板切除術単独より優れていることを示した無作為対照比較研究がないばかりでなく、頸椎椎間板切除術が保存療法より優れていることを示した無作為研究もありません」と、Nachemson博士は述べている。(FILE327

他の因子を無視して脊椎の構造的な異常にのみこだわる医師は、そのことによって患者を危険にさらしているのだと示唆する。(FILE386

それらの医師は腰痛を急性損傷と解釈し、患者に数日間、数週間そして数ヶ月間の臥床安静を命じ、他のいい加減な治療法や考え方を患者に無理強いした。彼らは活動に対する恐怖、再損傷に対する恐怖、そして身体的ストレスや労働に対する恐怖を植え付けた。この分野は長い道のりをたどってきたのである。・・・過去10年間における腰痛研究の進展によって達成された特筆すべき成果は、慢性腰痛についての伝統的な見方が覆されたことであった。・・・厄介な慢性腰痛の説明に大きな変化が起きている。 従来の重症慢性腰痛の生物医学的見解は多くの場合、脊椎の個々の病理学的変化や非連続に起きる脊椎症状の集合が、健康状態および行動面の問題によって複雑 化したものであった。・・・腰痛の正確な見方は、ほとんどの医療機関、企業、行政機関、および障害補償や杜会保障制度にまだ浸透していない。FILE388

腰痛予防に関する誤解は現代文化に広く深く根を下ろしている。(FILE389

1 ドルの教育パンフレットが他より $200〜$300安い費用で同様の長期 結果を示したという事実は、最低ラ インを見ているマネージドケアの管理者にとって説得力があることを示 した。(FILE395

腰痛疾患の性質に関する根本的な誤解が存在するのではないだろうか。(FILE409

オーストラリアのビクトリア州のキャンペーンが、一般の人々および医療関係者の腰痛の捉え方を変化させることに成功したことを指摘した。(FILE411

この割合は現在下がり続けていて、神話がばらまかれて、少数の人の利益になるが多くの人の不利益になるような不名誉な時代は終わった。不利益をうけたある人たちは、手術の結果、明らかにいっそう悪くなった。・・以前この手術(ヘルニア手術)を熱烈に支持していたマイアミ大学は、今ではこの手術をやめて、厳密なリハビリテーションのプログラムを採用している。(FILE417

ノルウェーの研究では、集中的な運動療法と行動療法の両方を行った。患者には、現代医療に依然として浸透している腰痛に対する慎重な対処法を気にしないよう指導した。 患者には腰を痛めることを心配しないように指示した。通常の活動を再開しても脊椎には全く害がないことを患者に説明した。そして、自由に腰を動かすこと、 すなわち、前屈みになったり重い物を持ったり、自然にかなったやり方で腰を使うよう奨励した。被験者はこれらの指示を強化するための漸進的な運動療法と集 団療法に参加した。(FILE412

椎間板ヘルニアではビデオを見た患者はパンフレットを読んだ患者よりも手術の実施率が31%低かったのです。さらに手術の実施率が低かったにもかかわらず、ビデオ群の治療成績は、パンフレット群とまったく同じでした(FILE282

現代社会の腰痛に対するアプローチを依然として支配している流行遅れの「損傷モデル」についても論じている。(FILE423

多くの研究者は、損傷モデル自体が欠陥のある時代遅れの考え方だと信じている。ほとんどの腰痛は、特定の損傷組織に原因があるわけではない。・・・・・・・・脊椎は非常に強力な適応性のある構造をしている。(FILE427

最近の欧州のエビデンスに基づくガイドラインは、脊椎固定術を非特異的慢性腰痛の治療に用いるのは例外とすべきだと提唱している。FILE449

運動がもたらす効果に関しては意外とも言えるエビデンスが得られている。約200例を対象とした研究から,疼痛持続期間と継続的就労不能期間は安静臥床群で最も長いという結果が示されたのである。    (FILE457

説得力のある科学的エビデンスによ って、損傷モデルを支持する人々の考 え方の誤りが指摘されている。しかし 長年抱いてきた腰痛に対する考え方を変えさせ、ベテランの臨床医の診療を 改めさせることは、いらいらするほど時間のかかる大仕事である。FILE459

いくつか国々では損傷モデルからゆっくりと脱却している。しかし米国 では今も腰痛に関する時代遅れの考え 方から抜け出せずにいる。先へ進むべ き時である。FILE460

中間報告によると、認知行動療法に割り当てられた患者は、段階的運動または併用療法を行った患者と同等の良い結果であった。FILE482

これらの結論から次のことがいえる。画像診断の解釈にはいたるところに落とし穴があり、少なくともある症例においては脊椎の異常所見はまったく偶然見つかったもので、痛みの原因ではないということだ。さらに,たとえ最高の画像診断機器を使ったとしても、筋肉のけいれんや靭帯の損傷を診断することはできない。これらは痛みの原因となりうるし、これらが原因で腰痛になった人は必ずいるだろう。(FILE485

博士の主張によれば、通常は、腰痛の評価 と治療が患者の腰痛問題への対処を手助けする手掛りになることはない。それどころか、た いていは、病理学的異常を探すための見当違 いの検査や、腰痛の因果関係に関するまだ証 明されていない理論の押し付けに力が注がれる。患者は多くの場合、有効性の明らかでな い治療を受けた挙句、自分には将来さらに問 題を引き起こす可能性のある基礎疾患があるという感情を抱く結果になる。(FILE489

身体的負荷が椎間板の健康に悪影響を及ぼすどころか、むしろ健康を増進することに気づいた。(FILE494

医師はその腰痛を、新たな所見と推定されるMRI上の構造的異常、すなわち線維輪の断裂、椎間板の突出、終板の変化に起因していると推測することが、ままある。その結果、推定された病因の治療につながる手順が実行に移される。しかしこの診断過程は大抵無駄な骨折りになる。FILE500

腰痛治療で腰椎固定術を選択した労災補償請求中の被験者725例のうち、驚くことに64%は術後1年以上経過しても依然として休職中であった。復職して1年間継続して働いていた被験者は6%しかいなかった。(FILE503

腰推固定術は現在米国で行われる全ての脊椎手術の約50%を占めるが、これらの手術を支持する科学的または臨床的エビデンスは得られていない。FILE506

椎間板に起因する疼痛”を診断カテゴリーとすることの妥当性について疑問を呈した。(FILE507

多くの患者と外科医が抱く、大きな椎間板へルニアを切除しなければ破減的な神経学的症状の結果を招くことになるであろうとの懸念は、全くの杞憂である」。Carragee博士は、「手術を受けるか受けないかの選択はつまるところ患者の好みの問題になる」と述べている。(FILE510

Turk博士は、慢性腰痛の治療において、手術、オピオイド、神経ブロック、脊髄電気刺激法および植え込み型薬剤注入システムといった広く行われている腰痛治療は心理療法を含むリハビリテーションプログラムよりも費用がかかり、効果は小さいことが多いと指摘している。(FILE511

新規研究において脊椎固定術を選択した (大部分は “椎間板に起因する” 腰痛のため) 1,950例の活動障害のある労働者のうち、固定術の2年後に63.9% は就労できない状態にあり、 22%は再手術を受け、 12%は重大な術後合併症を有していた。FILE512

臥床安静は、ほとんどの疾患の医学において、治療法としてはおおむね見捨てられている。多くの点で、治療としての臥床安静は、過ぎ去った時代の遺物である。臥床安静は、腰痛および坐骨神経痛の治療法としては徐々にすたれていくだろうと予測する人もいることだろう。(FILE100

固定術は認知行動療法を取り入れた体系化されたリハビリテーションプログラムよりは有効性が低いと考えられる。(FILE518

リフティング設備の有無にかかわらず、背部痛あるいはその結果としての身体機能障害の予防法として、仕事技術のアドバイスやトレーニングを支持するエビデンスは存在しない。(FILE519

これらの結果は、慢性疼痛が脳機能全面に広く影響を与えることを明示している。そして、DMNの崩壊が慢性疼痛に伴う認知および行動障害の根底となっている事を示唆している。FILE521

恐怖、過度の関心、および不安といった心理社会的因子は、疼痛障害を誘発、悪化させる FILE522

今回の研究から得られた経験によれば、そういった介入は人間工学的な問題や安全面の問題の解決に留まらず職場における心理社会的問題の解決にもつながる(FILE524

MPSについて教育を受けていない医学部生は、卒業後もその存在を知ることなく診療を行うため、現実には多数存在しているMPSの患者たちを前にしながら、正しい診断、治療が行えないのである。臨床医がMPSに無関心であることによってもたらされる弊害として重要なことは、TPがもたらす疼痛に対して他の疾患の診断が下されることである。診 断が異なると治療も変わってくる。膝の痛みが軟骨の磨耗であるとなれば、最終的には人工関節置換術のような手術療法が行われ、二度と正座ができなくなる し、耐用年数を超えれば再手術が必要になる。腰下肢痛が神経根の炎症であるとなれば、治療には神経根ブロックが繰り返し行われるか、手術療法が行われる。 しかし、このような侵襲の大きい治療が行われる一方で、疼痛の改善という目的は達成されない。MPSを正しく診断することができれば、鍼療法(TPA)と ストレッチという侵襲のほとんどない方法で的確に疼痛を改善できるのである。(FILE194

種々の原因により生じた筋緊張は,虚血を引き起こし,内因性の発痛物質の蓄積を招来して,痛みや凝りを生じる。つまり,局所の痛みは,筋に分布する痛覚受容器が過敏になることによりもたらされると理解される。(FILE32)     

「筋・筋膜痛は,慢性痛の重要な要因でありながら,つい最近まで見過ごされてきた」と北原氏は話す。 また,非ステロイド系抗炎症薬や筋弛緩薬などが漫然と投与され,副作用や合併症を生じる場合も多いという。 (FILE24

拘縮が発生すると、血流が障害され、これに拘縮によるエネルギー消費の増大が加わって代謝産物が蓄積し、ブラジキニンが産出されて痛みを生じる。このときプ ロスタグランジンも産出され、ブラジキ;ンの発痛作用を増加する。筋肉が痛みの発生源となると、反射性筋収縮や血管収縮が加わって痛みを強め、痛みの悪循環ができ上がる。(FILE10

しかし,これまでに良い転帰をもたらしてきたのは,体幹の特定の筋肉の障害や緊張に直接働きかける治療法だ。患者の大部分では,腰痛のおもな原因は筋肉の障害や緊張である」と述べた。同部長は「疼痛の医学的管理において筋肉系の重要性が軽視されているのは,医師が大学で学ぶ内容に関係があるようだ。基礎解剖学が終わると,疼痛の診断および治療に関する教育に筋肉はほとんど出てこない。つまり,われわれは診断アルゴリズムにおいて全身の70%を無視しているのだ」と述べた。(FILE12)

しかしさらに末梢循環低下が続けば(その他の増悪因子もないわけではないが)、潜在性のトリガーポイントの一部が活性化されて、活動性トリガーポイントとな る。こうなると運動痛はもちろん圧迫他の刺激を加えなくても自発性に関連痛が生じるようになる。関連痛以外にも「痺れ」感、感覚鈍麻が生じることもある。 自発性に生じた関連痛・痺れは患者の訴えとなる。(FILE188

GumはMPSを神経根症状の一つとみなし,その治療に筋への鍼通電刺激を勧めている。(FILE189

医療の現場において痛みの患者に対する不適切な診断が非常に多いということです。実際には、筋筋膜性疼痛症候群による疼痛の患者は非常に数多くいるにもかかわらず、筋筋膜性疼痛症候群という診断を下す医師はほとんどいません。(FILE193

筋性筋膜痛のトリガーポイント(TrP)は筋・骨格性疼痛に共通してみられる原因であり,急性外傷や慢性的な姿勢保持・反復動作などに伴う筋群への過剰負荷 などに起因する。このTrPが治癒しない場合には,末梢性・中枢性の感作機序を介した持続的な異常筋収縮が生じ,血管圧迫から局所が低酸素状態に陥ると疼痛は慢性化してしまう。(FILE199)

これらの疾患が一続きのものであることを理解することが重要である。そしてこの論文に記載されている疼痛症侯群、すなわち線維筋痛症、広範囲にわたる慢性疼痛、慢性腰痛、および慢性頸部痛はいずれも、1つの別個の疾患を表しているわけではない。それらは症状の説明にすぎない。(FILE330

椎間板ヘルニアによる根性下肢痛は本質的には「筋痛」であり「皮膚痛」としての要素は少ないと思われた。FILE269

筋筋膜性疼痛症候群の症状は多彩ですが、痛み以外の症状で多く見られるのは、しびれ感、知覚鈍麻、筋力低下、関節の可動域制限などです。また、トリガーポイントに基づく特殊な症状として、胸鎖乳突筋から生じる姿勢性めまいや、咬筋から起こる耳鳴りが比較的よく見られます。FILE403

筋・筋膜性疼痛症候群を患っている人たちはこれまでずっと辛い人生を送ってきた。医者に診せても、そもそも診察する医師の大半が慢性の筋・筋膜痛(chronic myofascial pain=CMP)の「存在を信じていない」のである。問題は、この症状に関して、科学的に 信頼できるわかりやすい原因が明らかになっていないこと、診断基準が正式に認定されていないことだった。そのせいで、医師やセラピストのトレーニングが行 なわれることもなかった。保険会社や社会保障庁の存在が患者たちの暮らしをさらに辛いものにした。しかし、今これが変わろうとしている。FILE418

多くの医師たちは、局所性の原因がない局所性の痛みはありえないと思い込んでいる。したがって、局所性の原因を証明できないので病気は存在しないと結論する。FILE425

骨 格筋は全体重の40%を占めているにもかかわらず、多くの医学教育施設において、筋骨格系については最低限のことしか教えられていない。このことが、筋筋 膜性疼痛に対して多くの誤った診断が行われている現状の説明になるかもしれない。理学療法士らは筋骨格系について詳しく勉強するが、筋筋膜トリガーポイン ト症侯群に関する問題を扱った臨床カリキュラムはほとんどない。多くの場合、臨床家は自分が臨床に従事するようになって初めてこの症侯群に出合う場合が多 い。そしてそれは、従来の診断や治療で患者の問題が解決できない場合が大半なのである。FILE444)

筋筋膜トリガーポイント症侯群(微小な損傷である可能性あり)といえる初期症状の人が治療を受けないと、将来、より重度な損傷になる素地をもつことになるのは明らかである。FILE451)

そもそも医師の処置が正しいのかどうかを論ずる前に、多くの医療者のなかに慢性痛や筋肉に関する概念がほとんどないというのは悲しい現実である。痛みば急性痛と慢性痛とでは病変がまったく違うため、治療法もまったく別のものとなる。アセスメントやマネジメントのためには、急性痛と慢性痛の鑑別は絶対的に必要である。FILE452)

臀筋にしこりが発生し、その痛みが腰から腿の裏側を経て、かかとの方までしぴれを出すことがあります。これを整形外科医がヘルニアによる神経障害と間違えたりするわけです。FILE479)

腰椎になんらかの手術を受けた患者の10〜40%はfailed back surgery syndromeになる。ということは、同症候群は増える恐れがある。多くの場合、手術前の段階で腰痛の成因が誤診きれている。さらに、手術を受けても症状がよくならない場合、診断ミスによる問題が持続するばかりか、術後管理の問題点も浮上してくる」と述べた。(FILE7

腰椎術後の5%〜50%にFBSSが発生する。
Rish らは文献上15,000人の椎間板手術患者の成績を分析して20%に症状の持続を認めている。米国では年間37,500名のFBSS患者が新たに生まれて いる。FBSSの治療には複数回の手術が行われることが多い。Waddellらによれば2回目の手術では40〜50%が改善し,20%は悪化する。3回 目の手術では20〜30%に有効であるが25%は悪化する。また4回目の手術で改善するのは10〜20%にとどまり,45%が術後悪化をみる。手術療法以 外にも硬膜外ブロック,脊髄電気刺激療法,神経根切断術などが試みられているが効果は芳しくない。(FILE70


腰仙椎手術後の患者の10〜40%で、慢性痛あるいは再発痛を生じる。こ れは、failed back surgery syndrome (FBSS)であり、様々な疼痛管理(内科的、外科的、リハビリテーション、行動療法)が行われている。(FILE306

直接的な医療費には、非ステロイド性消炎鎮痛薬による消化管合併症や様々な形のfailed back surgery syndromeなどの、腰痛治療によって発生した合併症と副作用を治療するための多額の費用も含まれるだろう。(FILE255


何度も腰椎手術を繰り返した結果起こるfailed back syndromeが最も多く原因疾患の半数以上を占めている。腰痛の診療には、急性期の治療法の選択、慢性化を予防する手段、臨床的検査結果(画像など) と疼痛の訴えの不一致、術後に著明な医療サイドヘの不信感どの困難な問題があり、さらに心理・社会的因子による疼痛の増強が、上述の原因疾患とともに腰 痛の難治化に関係している。(FILE145


手術は一部の患者にはいくらかの改善をもたらすが、“半数近くは改善を得られないだろう”。 そして手術によって改善しない人々は、改善の見込みが不確かな、“failed back surgery syndrome”という厄介なカテゴリーに入る可能性が高いことに博士は言及している。(FILE215


慢性腰痛に対する多くの治療と同様、固定術でもかなりの割合で無効例があるという事実を隠すことはできない。脊椎治療に携わる医師も完全には理解していない理由により、固定術の結果にも予測不能な部分がある。Orthopedics Todayの最新号に掲載された、失敗した脊椎手術に関する興味深いフォーラムでも、Groopman博士の記事と同じ問題に触れている。(FILE117

心 理・社全的要因が錯綜した慢性疼痛患者は、医療の治療対象から排除される傾向がある。これらの対象者にリハビリテーションチームが治療契約を結んで、その 枠組みの中で心理的な「拘えの環境」を作る3ヵ月プログラムを実施した。認知行動療法にカウンセリングを併用して、自己の内的世界への直面化を促しつつア イデンティティの確立と生活の再構築を図る。(FILE230

高齢者に多い腰部脊柱管狭窄は診断基準すらできていません。ですから、病院によって手術するしないについて見解の相違があり、整形外科医の間でも十分なコンセンサスが得られていません。外科医から手術を勧められた患者さんへの対応ですが、手術は考える必要はないだろうとお話してください。(FILE446


手術による合併症の発生率が高いこと、 さらには社会が負担する費用および手術後のfailed back surgery syndromeの患者の苦痛を考えて、我々は、注意深く選択された重症の疼痛患者のみをこの術式の対象として検討することを強く推奨した”(FILE449



加茂整形外科医院