ヘルニアに関する文献

 

実験的治療で、痛みのある椎間板ヘルニアの治療に大変革が起きる? 

なぜ、症状が現れる椎間板ヘルニアと、そうではないものがあるのか、科学者にはわかっていない。

主要な治療法が効果なしと判明

厳密に計画された新しい無作為研究によれば、坐骨神経痛に対するこの治療法は誤っているようである。Maastrict大学(オランダ)のPatrickVroomen博士らは“我々は、ベッドでの安静が坐骨神経痛に対する有効な治療法であることを裏付ける証拠を見出せなかった"と記している

坐骨神経痛患者183例について研究した。患者は、根性痛分布、咳やくしゃみをしたりいきんだりしたときの下肢痛の増強、筋力低下、知覚障害、反射欠如、下肢伸展挙上テスト陽性など、これらの症状や徴候のうち少なくとも2つを有するものとした。ほとんどの患者にMRIを行ったが、神経根の圧迫が見つかったのは59%のみであった。残りの患者に、椎間板ヘルニアが証明されたかどうかは、論文からは不明である。

神経根圧迫のある患者に安静が有効であるとの知見を裏付ける証拠は得られなかった。Vroomen博士らによれば、MRIで神経根圧迫が証明された患者とされなかった患者の間は、安静の有効性に関して有意差はなかったという。

腰痛診断・治療の焦点を筋肉に   MRIなしでも早期職場復帰可能に 

遠隔部位に放散する疼痛が頻繁に起こる患者に必ず見つかる筋肉内の圧痛点である。この疼痛はしばしば神経根痛と誤診され,その結果,不必要な外科手術,神経ブロックやMRIの施行を招いている。

臥床安静、理学療法それとも通常の活動?

坐骨神経痛に対する臥床安静についての無作為研究は、痛みのある椎間板ヘルニアの治療において、医学の完全な転換が起きていることを意味しているように思われる。20世紀のほとんどの期間、臥床安静は、他の多くの疾患に対してもそうであったように、椎間板ヘルニアの標準的治療であった。それは今日、世界の多くの地域では、依然として坐骨神経痛の標準的治療であるかもしれない。

坐骨神経痛に対する床上安静の有効性の欠如

腰仙神経根症候群の症状および徴候を有する患者に対しては、床上安静が経過観察よりも有効な治療法であるとはいえない。

坐骨神経痛の一般的治療方法の不確実な将来

最近、2つの医学論文の総説において、硬膜外ステロイド注射は坐骨神経痛の効果的な治療法であるという確証がないことが示された。Spineの最新情報のぺ一ジで、Nikolai Bogduk医学博士は「腰椎または尾骨にステロイド使用を擁護する二重盲検比較試験の注目すべきデータはありません」と結論を下している(Spine,1995;20(7):845-848を参照)。

有痛性椎間板障害と無痛性の異常を見分ける方法は?

壮年者の約1/3に腰椎に無痛性椎間板ヘルニアの存在がはっきりと証明された。画像所見で椎間板ヘルニアが認められただけでは、治療や用心が必要とはもはやいえないのである。

しかしながら、椎間板ヘルニアに単に神経の圧迫が存在するだけでは、それが有痛性であるとか、治療を必要とする目安にはならない。重度の神経根圧追がみられる椎間板ヘルニアにも、全く症状の現れないものがある。この種のヘルニアと有痛性椎間板ヘルニアとの違いが何であるのかは、いまだ解明されていない。

画像所見の新しい報告様式を二人の研究者が提案:現在の報告書は患者に無用の心配をさせている

この方法により、医師、放射線医および患者が単純X線像の予測が限られていることを認識し、不必要な放射線検査を減らすことにもなるだろうと期待が寄せられている。MRIや他の特殊な画像検査の報告書についても同様のことが言えるであろう。

椎間板ヘルニアに有痛性と無痛性があるのは?

大きさも形も同じ腰椎の椎間板ヘルニアがあるのに、坐骨神経痛に苦しむ人と、疼痛もなく生涯元気に歩き回れる人がいるのはなぜだろうか。

症状のない椎間板の脱出およぴ遊離脱出はまれであったが、高信号域はよくみられた

症状のない被験者におけるMRIの異常を調べた本研究を初めとするすべての研究から分かったことは、『MRI所見の何か一つの特徴が、すなわちその椎間板が痛みを惹起していることを示しているという確証は、今のところ存在しない』ということであろう。

正常人における腰椎MRIの異常所見の頻度

その結果、98人中52%に少なくとも1椎間以上の椎間板膨隆が見られ、27%に椎間板突出が、1%に椎間板脱出が見られた。

椎間板ヘルニアは手術なしで治る  大朏博善  (週刊文春より)

ノルウェーのオスロ市立病院の研究考によって発表されたその調査は、切っても切らなくてもいい'椎間板ヘルニア患者126人に対し、.その予後を比較・検討した。「1年後の成績としては、”手術グループ”のほうがいい結果が出ました.しかし、時間が経つにしたがって"非手術(保存)グループ”の成績がよくなって、両者の差がぐっとつまるんです。そして、4年後、5年後となるとハッキリした違いがなくなってしまうんです」(同前)

腰痛のTMS理論

外科医は粉砕した椎間板のMRースキャンという有力な武器を片手に、手術を迫っていた。イーサンは痛みと麻薬系鎮痛剤と鎮静剤で、精神の明断性を失っていた。それでも彼は抵抗を試みた。「別の医師のところに行きました。コーチゾソの注射をしてくれましたが、それも気休めでした」サーノ博士の本を再読した。椎間板ヘルニア自体が痛みを起こすのではない。ヘルニアによって筋肉は弱り、神経の機能不全は起こるが、痛みは起こらない。

臨床医のための痛みのメカニズム   横田敏勝(滋賀医大名誉教授)

脊髄後根を圧迫すると神経根痛(radicular pain)がでて、圧迫された後根の支配領域に痛みが走るとみられている。しかし、この考えは特別な場合にしか通用しない。たとえば、脱髄線維を含む脊髄後根への機械刺激は神経根痛を誘発するが、正常な脊髄神経根の圧迫は痛みを生じない。

坐骨神経痛のRCtsー驚くべき知見

2つの無作為研究において、保存療法と椎間板切除術による、椎問板ヘルニアと坐骨神経痛の患者のアウトカムは同様であった。フィンランドの小規模RCT(被験者56例)において、手術群は、疼痛および機能に関して早期には利点がみられたが、2年後の経過観察時には統計学的に有意な優越性は認められなかった。88例の患者を対象にした英国のRCTでも同様のパターンが認められた。

慢性頸部根性痛治療に関する初の無作為研究

長期的に見た場合、頸部コルセットのようなシンプルな治療でも、あるいは、もしかすると治療しなくても、理学療法や手術と同程度に有効なようです。

腰椎椎間板ヘルニアのガイドライン作成状況  日本整形外科学会誌  第78巻第4号 2004. April

腰椎椎間板ヘルニアに限定したガイドラインは世界的にも認められない。その背景としては、椎間板ヘルニアとの診断に明確な基準がないこと、椎間板ヘルニアの分類法や治療判定の基準も多種多彩であること、近年画像診断法が劇的に変化したことなどの要素があるため、質の高いRCTが少ない事が一つの要因と考えられる。

安心させるために画像検査を行なってもよいのだろうか?

本研究で短時間撮像MRIを受けた患者の中には、腫瘍お,よび感染を有した者はいなかった。これらの患者は確かにそのことを聞いて安心しただろう。しかし、それ以外にどんなことがわかったのだろうか。3分の1の患者には椎間板ヘルニアがあった。60%の患者には椎間板膨隆があった。63%の患者は椎間板の信号強度が低下していた。半数以上が椎間関節変性を有していた。20%は脊柱管中心性の狭窄を有し、17%は外側狭窄を有していた。

短時間撮像MRI

もちろん短時間撮像MRIにも欠点があり、それは多くのものが見え過ぎることである。従来型のMRIのように、無関係またはほとんど無関係の解剖学的異常に関するさまざまな情報を提供する。そしてこれらの異常の存在が、患者と医師を不適当な考えや不必要な治療へと誘い込むことが時々ある。

腰痛の地獄の苦しみ      アンドルー・ワイル 「癒す心、治る力」

サーノのやりかたで腰痛が治ったという人にたくさん会いました。じつにいろんなタイプの人たちです。サーノは科学者と信仰治療家を兼ねた人なんですね。彼の理論には説得力がありますし、直観的にもほんものだという感じがするんです。外科的な解決法はあまり信用できません。手術を受けてから数年後に再発した人をたくさんみてきましたからね。

無痛性胸部椎間板ヘルニア

以前の研究で、Wood医師らは無痛性椎間板ヘルニアが極めて一般的な所見であることを明らかにしている。平均年齢40歳の無症状の被験者60人のうち、37%に明らかな椎間板ヘルニア、53%に椎間板膨隆、58%に線維輸断裂を認めた。同様に症状を伴わない脊髄の変形も29%と驚くほど多くの被験者に認められた(Journal of Bone and Joint Surgery,1995;77-A(11):1631-1638を参照)。

椎間板ヘルニアの周囲の炎症

Volvo賞を獲得したMats Gronblad医師らの研究は、椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の炎症関与に関する有力な仮説に異議を唱えた(1996年、Spine掲載予定)。従来の研究では、ヘルニアを起こした椎間板組織には、健常組織に比べてホスホリパーゼA2(PLA2)がはるかに多く存在しており、このPLA2が坐骨神経痛に関連した炎症反応に重要な役割を果たしていると推定されていた。今回、驚くべきことに、Gronblad医師らはヘルニアを起こした椎間板と対照とした正常椎間板のPLA2値が等しいことを見出したのである。さらに関連する炎症細胞も比較的少数しか認められなかった。では、これまでの研究は椎間板ヘルニアの炎症関与に対して性急に結論を出してしまっていたのだろうか?あるいは、今回の研究が炎症の急性反応がおさまった後の椎間板ヘルニアを調べているだけなのだろうか?

RCTは椎間板手術を支持

ほとんどの研究によると、保存療法を受けた患者は、疼痛および機能に関して、手術を受けた患者にある時点で追いつく。

坐骨神経痛や脊柱管狭窄症に対する外科的治療は保存療法より有効か?

Weber医師の試験1年後の成績をみると、改善したと回答した患者が手術群では65%であったのに対し、保存療法群では35%に過ぎなかった。このような手術の優位性は4年間にわたり持続した。それ以降では手術群と保存療法群の成績は同等であった

腰椎椎間板ヘルニアにおける神経根性下肢痛の本質

以上の点を総合すると、椎間板ヘルニアによる根性下肢痛は本質的には「筋痛」であり「皮膚痛」としての要素は少ないと思われた。

大きな椎間板ヘルニアを手術以外の方法で治療するのは安全か?

また、突出・遊離脱出ヘルニアの臨床経過は、一般的に他のタイプの椎間板ヘルニアと同様に良好であることも研究で明らかにされている。患者が、症状の好転を待てば、通常は回復する。よって、突出・遊離脱出ヘルニアの存在だけでは、もはや手術適応とはいえない。

最新研究:対語式ビデオプログラムで手術の実施率とコストが低下

Deyo博士は、「椎間板ヘルニアではビデオを見た患者はパンフレットを読んだ患者よりも手術の実施率が31%低かったのです。さらに手術の実施率が低かったにもかかわらず、ビデオ群の治療成績は、パンフレット群とまったく同じでした」と述べた(Deyo et al.,1999)。

髄核ヘルニアによる坐骨神経痛に対するコルチコステロイドの硬膜外注射

髄核ヘルニアによる坐骨神経痛患者では,メチルプレドニゾロンの硬膜外注射により,下肢疼痛および感覚欠損が短期的に改善する可能性があるが,この治療は有意な機能的利点を示さないし,手術の必要性を減少させることもなかった。

硬膜外ステロイド注射の有効性はまだ証明されていない

硬膜外ステロイド注射が有効であるとする決定的な科学的証拠はほとんどみつからなかった(Pain,1995;63:279-288.を参照)。

神経根注射

最近Finlandで行われた無作為研究では、神経根浸潤は坐骨神経痛の患者に大きな効果をもたらしたが、その持続期間は短かったとの結論が出ている。生理食塩水注射でも長期的な結果は同じであった。

疼痛学序説 痛みの意味を考える

この割合は現在下がり続けていて、神話がばらまかれて、少数の人の利益になるが多くの人の不利益になるような不名誉な時代は終わった。不利益をうけたある人たちは、手術の結果、明らかにいっそう悪くなった。

「腰痛の保存療法」ー画像診断によるヘルニアの自然経過

高度の下肢麻痺や膀胱直腸障害を伴う例を除き、腰椎椎間板ヘルニアに対しては保存的治療が第一に選択されるべきと考える。

椎間板ヘルニア:保存療法適応例にCTやMRIは必要ない

これまでの複数の研究では,副腎皮質ステロイド硬膜外注射の明らかな効果は認められていない。運動がもたらす効果に関しては意外とも言えるエビデンスが得られている。約200例を対象とした研究から,疼痛持続期間と継続的就労不能期間は安静臥床群で最も長いという結果が示されたのである。 

最新研究:対話式ビデオプログラムで手術の実施率とコストが低下

椎間板ヘルニアではビデオを見た患者はパンフレットを読んだ患者よりも手術の実施率が31%低かったのです。さらに手術の実施率が低かったにもかかわらず、ビデオ群の治療成績は、パンフレット群とまったく同じでした。

臥床安静、理学療法それとも通常の活動?

臥床安静は、ほとんどの疾患の医学において、治療法としてはおおむね見捨てられている。多くの点で、治療としての臥床安静は、過ぎ去った時代の遺物である。臥床安静は、腰痛および坐骨神経痛の治療法としては徐々にすたれていくだろうと予測する人もいることだろう。

軽度の外傷によって重篤な腰痛が誘発される?“損傷モデル”は妥当なのか?

いくつか国々では損傷モデルからゆっくりと脱却している。しかし米国では今も腰痛に関する時代遅れの考え方から抜け出せずにいる。先へ進むべき時である。

包括的集中プログラムで腰痛が消失; 4週間の訓練による効果に期待

担当した疼痛専門医Gabriele Müller博士は「この治療法なくしてはD氏も典型的な慢性疼痛患者の仲間入りをしていたはずだ。同氏の場合,これまでの経過は順調で,改善の見込みのある患者を探し出して,できる限り早く職場に復帰させるというプログラムの目的は達成されそうだ。実際,われわれのセンターで同プログラムを終了した患者20例中19例が職場への復帰を果たしている」と説明した。


治療成績

椎間板ヘルニアの手術成績など

レーザーによる椎間板手術がExcellentまたはGoodであったのは、患者のわずか31%に過ぎないという研究が発表される

無作為研究でレーザー椎間板手術の成績ふるわず

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手術しても60%ぐらいの改善率、本を読んだだけでよくなる人(サーノ博士のヒーリングバックペイン)、○○式治療でよくなる人、私のような治療でよくなる人(症例参)、各人にあった治療を見つけよなんていいますが、こんな病気もめずらしいです。自分にあった治療をどうして見つけたらいいのでしょうか。医師はなぜ適切なアドバイスができないのでしょうか。

生理学的知見からもどうも納得がいかないんです。普通神経を圧迫すると麻痺が生じます。ヘルニアによる麻痺はまずみられません。筋力の低下はみられますが麻痺ではなく痛みのためと思われます。しびれと知覚麻痺が混同されていることもあります。

これらのことからどういう結論を導きだすべきでしょうか?

私は痛みとヘルニアは無関係と考えています。では痛みはどうして起きているのかということですが、あとから説明いたします。

ではなぜその場所に起きるのかという点ですが、よくわかりません。なぜ五十肩や緊張型頭痛になる人がいるのかも明確に説明されていません。ただ、長年の経験から、筋骨格系に痛みを作りやすいタイプの人がいることは事実です。そのような方にはしばしば腰にヘルニアの手術のあとがあったりします。今日は股関節のところ、次は肩、次は大腿と痛みがあたかも移動しているように感ずることもあります。臨床の現場に1週間もいればそのことに気付きますよ。あたかも分かっているように説明していますが、多くの医師も本音のところよく分かっていないと思います。なぜその場所が痛むのか説明できないのです。たとえばストレスで円形脱毛症になる人もいればならない人もいる、その理由も分かりませんし、なぜその場所に円形脱毛症ができたか説明できないと思います。

ところが無理をして説明しようとします(ヘルニア、椎間板、軟骨、ずれ、歪み・・・などなど)。しかし近年の痛みの生理学の急速な発展やMRIの普及で、次第にその矛盾がわかってきたというところです。

急性痛の多くは、発痛物質(ブラジキニン)が放出されて痛覚過敏になっているわけですから、すぐに解決してやることはできるのですが、問題はそれが慢性化したこきのことです。

従来のように解剖学的構造上の破綻に原因を求めるのではなく生物・心理・社会的疼痛症候群Bio-psycho-social medicineとしてとらえるべきと考えています。今後の研究に期待します。


横田敏勝著「痛みのメカニズム」に神経根痛に「圧迫された後根の支配領域に痛みが走るとみられている、しかし、この考えは特別な場合にしか通用しない、たとえば、脱髄線維を含む脊髄後根への機械刺激は神経根痛を誘発するが、正常な脊髄神経根の圧迫は痛みを生じない

侵害受容器を介さず神経線維からインパルスが発生している(異所性興奮)。異所性興奮を生じる可能性が高いのは脱髄部、及び障害された末梢神経の側芽と神経腫である。


「椎間板ヘルニアがどのようにして痛みをおこすか ・・・・・
これは実はまだいろいろ議論のあるところです。一見すると「飛び出したヘルニアによって、神経根が機械的に圧迫され痛みを起こしている」というと納得できそうですが、ある報告によれば、正常の神経根をただ機械的に圧迫するだけでは痛みをおこさないそうです。」

大井淑雄、大上仁志(自治医大)


ラットの椎間板ヘルニアの実験モデルを作り,正常椎間板と変性椎間板による神経根周囲の炎症反応として,サイトカインの分析を行なっており,神経根性疼痛の発症メカニズムの解明に今後役立つものと期待されました。



また近年,神経の実質的な傷害を伴わない神経炎(neuritis)という概念が登場した。整形外科領域における圧迫を加えない化学的因子のみによる椎間板ヘルニアモデルなどはこの神経炎モデルの1つであると考えられる。

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加茂整形外科医院